[出典] "Structural insights into how Cas9 targets nucleosomes" Nureki O, Nagamura R, Kusakizako T, Hirano H, Kujirai T, Kato J, Kurumizaka H, Endo M, Toki S, Saika H. Research Square 2024-09-09 (preprint). https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-5031908/v1 [所属] 東大, 農業・食品産業技術総合研究機構, 横浜市大, 琉球大

 CRISPR-Cas9は、ガイドRNAに誘導されて、特定のゲノム遺伝子座に結合し、DNA二本鎖を切断する (DSB)。一方で、真核生物のゲノムDNAはヒストン8量体に巻き付いた構造(ヌクレオソーム)を基本単位とする高次複合体(クロマチン)を形成している。その中で、Cas9によるDSBの構造基盤はこれまで、遊離DNAを標的とした場合について解析が進んでおり、ヌクレオソーム内のDNAを標的とした場合の構造基盤の解明は遅れていた。

   東大の濡木と胡桃坂らをはじめとする研究チームが今回、SpCas9-NG, sgRNAおよびヌクレオソーム三元複合体のクライオ電顕構造を4.56 Å分解能で再構成し、Cas9がリンカーDNAとヌクレオソームの出入り口DNA領域を標的とするが、ヒストン8量体にしっかりと巻き付いたDNAは標的としないことを、明らかにした [Figure 2引用左下図とFigure 5引用右下図参照]
Structural insights into how Cas9 2  Structural insights into how Cas9 5
 また、Cas9とヌクレオソームが複数のサイトで相互作用することが示唆され、ヌクレオソームDNAとCas9との相互作用を減少させた変異体では、in vitroおよびin vivoの両方でヌクレオソームDNA切断活性が改善されることが確認された。

 これらの知見は、クロマチンにおける新規ゲノム編集ツールの開発に貢献するだろう。

[投稿構成]
Introduction
Main
  • Cas9 targets nucleosomal DNA end regions
  • Cryo-EM analysis for Cas9-sgRNA-nucleosome complex targeting linker DNA
  • Interactions between PI domain in Cas9 and nucleosome
  • Nonspecific interactions between Cas9 and core DNA affects DNA cleavage efficiency in vitro and in vivo
Discussion
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