[注] IL-30:インターロイキン-30
[出典] "Prevention of Prostate Cancer Metastasis by a CRISPR-delivering Nanoplatform for Interleukin-30 Genome Editing" Fieni C [..] Di Carlo E. Mol Ther. 2024-09-06. https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2024.09.011 [所属] Università degli Studi "G. d'Annunzio"Chieti – Pescara, "La Sapienza" University of Rome
FieniとDi Carloらは、2024年2月5日に、"Immunoliposome-based targeted delivery of the CRISPR/Cas9gRNA-IL30 complex inhibits prostate cancer and prolongs survival" と題する論文をExperimental & Molecular Medicine 誌に投稿し, 6月24日に受理され, 9月4日に刊行されている。 [*]
今回の論文も、先行論文と同じく、IL-30 を標的とするCRISPR-Cas9を抗PSCA-Absで機能化したCas9gRNA-hIL30-PSCA NxPs(Cas9hIL30-PSCA-NP)による前立腺癌療法の報告であるが、循環している前立腺癌細胞や微小塞栓を持つマウスの肺転移を抑制することを確認した点が、新規である。
[詳細]
IL30とPC細胞の転移能を標的とするNPの効率は、in vivoでは肺転移の異種移植モデルで、in vitroではIL30+ PC-内皮細胞(ndothelial-Cell: EC)共培養の3D-スフェロイドを含む2-Organ-on-Chip(2-OC)を用いて、肺を模倣したスフェロイド、または骨髄(BM)を模倣したniche-mimicking-scaffoldのいずれかと回路を組んで調べた [グラフィカルアブストラクト の最下段の図参照]。
- Cas9hIL30-PSCA-NPは、循環安定性、ゲノム編集効率、オフターゲット効果および臓器毒性を示さなかった。循環しているPC細胞および微小塞栓を有するマウスに、3用量/13日間、または5用量/20日間のNPを静脈内注射すると、肺転移が大幅に阻害された。
- Cas9hIL30-PSCA-NPsは、PC細胞の増殖とIL30および転移促進因子であるCXCR2、CXCR4、IGF1、L1CAM、METAP2、MMP2およびTNFSF10の発現を阻害したが、CDH1の発現は上昇した。
PC-肺およびPC-BM 2-OCにおいて、Cas9hIL30-PSCA-NPsは、PC細胞のCXCL2/GROβの放出と、DKK1、OPGおよびIL6の放出を抑制した。CXCL2/GROβはin vivoで転移性骨髄系細胞内浸潤と関連しており、DKK1、OPGおよびIL6はin vitroで内皮ネットワーク形成とがん細胞遊走を促進する。
[Emma Di Carloが率いる研究チームからの論文紹介crisp_bio記事]
- [*] Cas9gRNA-hIL30-PSCA NxPs:2024-09-10 イムノリポソームを用いたCRISPR/Cas9gRNA-IL30複合体の標的送達により前立腺癌を抑制し、生存期間を延長する。
- 2023-04-02 CRISPR/Cas9を介した大腸がん幹細胞におけるIL-30の不活性化が、癌化能を抑制し宿主の生存率を向上させる。
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