[出典] "PerturbDB for unraveling gene functions and regulatory networks" Yang B, Zhang M, Shi Y, Zheng BQ [..] Lin H, Liao JY, Yin D. Nucleic Acids Res. 2024-09-11. https://doi.org/10.1093/nar/gkae777 [所属] Sun Yat-Sen Memorial Hospital (Sun Yat-Sen U).

 Perturb-Seqは、プール型CRISPRゲノム編集にscRNA-seqのリードアウトを組み合わせたハイコンテントの表現型スクリーニングを行う手法である。2016年にPerturb-Seqが発表  されて以来、Perturb-Seq由来のデータセットは急速に蓄積されてきている。それにもかかわらず、それらを効率的に広く再利用するためのユーザーフレンドリーなプラットフォームが整備されていなかった中で、中国の研究チームが今回、標題のPerturbDBを構築し、Webサイト(http://research.gzsys.org.cn/perturbdb)から公開した。

 PerturbDBは、66件のPerturb-Seqデータセットが手作業で取り込まれ、19種類の細胞株にわたる10,194遺伝子のノックダウンから得られた4,518,521件のシングルセル・トランスクリプトームを網羅している。すべてのデータセットはMixscapeアルゴリズム [Nat Genet, 2021]を用いて統一的に処理された。Perturb-Seqデータセットから得られた3,395種類の遺伝子について、転写産物摂動の結果(表現型)によってクラスター化し、421件の遺伝子クラスターを得た。

 また、化学的に摂動を加えたトランスクリプトームとPerturb-Seqデータセットを統合することで、1,409遺伝子を標的とする552種類の潜在的阻害剤を同定した。その中には、実験的に検証されたmTORシグナル阻害剤であるレチノールが含まれていた。

 さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)プログラムのデータセット、Library of Integrated Network-Based Cellular Signatures(LINCS)プログラムデータセット、およびENCODEプロジェクトのバルク摂動RNA-Seqデータセットも統合した。これらの統合は、癌における遺伝子制御の役割を理解し、新規遺伝子阻害剤を同定し、遺伝子機能を予測するのに役立つ。 

 PerturbDB公開にあたっては、ユーザーが容易に、PerturbDBで利用可能な全ての包括的データセットを可視化、解析、ダウンロードすることができるようなインタラクティブなインターフェースも開発した。

 PerturbDBPerturbDBは遺伝子機能研究を大きく推進し、癌などの疾患における遺伝子の制御的役割の理解を深めるだろう [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]

[図一覧]
[データとプログラム入手先]
[Perturb-seq関連crisp_bio記事]