[出典] "Synergistic effect of split DNA activators of Cas12a with exon-unwinding and induced targeting effect" Huang S, Lou Y, Zheng L. Nucleic Acids Res. 2024-09-11. https://doi.org/10.1093/nar/gkae766 [所属] Wenzhou Medical U

 RNA誘導型ヌクレアーゼであるCRISPR-Cas12aは、標的DNAのシス切断に加えて、標的DNA結合によって非標的一本鎖DNA(ssDNA)のトランス切断の活性化が進行する。この特徴から、Cas12aは特に超高感度な分子診断に、再利用されてきた。この標的DNAはトランス切断活性のアクチベーターと称されるが、スプリット型アクチベーター[*]も、トランス切断活性を介したバイオセンサーの開発にすでに利用されている。

[*]
 しかし、Cas12aのトランス切断活性の活性化、特にスプリットDNAアクチベーターによる活性化のメカニズムは、まだ十分に解明されていない。中国の研究チームが今回、スプリット型アクチベーターの相乗効果を解明し、この現象を説明するために、誘導標的効果(induced targeting effect)とエクソン・アワインディング(exon-unwinding)の概念を導入した。

 研究チームは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接するスプリットDNAアクチベーター(Target proximal to PAM: Pp-DNA)がCas12aリボ核タンパク質(Cas12a-RNP)に結合すると、Cas12a aplit activatorPAMから遠位のスプリットDNAアクチベーターTarget distal from PAM: Pd-DNA)を捉え相互作用し、相乗効果を発揮する三元複合体が形成されることを、同定した。ここで、Pp-DNAとPd-DNAとして、ssDNAでもdsDNAも許される [Fig. 6引用右図参照]

 Pp-DNAアクチベーターがCas12a-RNPに結合すると、Cas12aはもう一方のPd-DNAアクチベーターをターゲッティングするように誘導される (induced targeting effect)。このターゲティングの過程で、PAM末端から遠位にあるアクチベータがdsDNAの場合、Cas12aはdsDNAの二重らせんをほどく能力を発揮する。この巻き戻し現象は、標的配列がdsDNAの末端に位置する場合により容易に観察されるため、研究チームは、これをエクソン巻き戻し(exon-unwinding)と呼んだ。

 これらの発見は、Cas12a活性の制御メカニズムに新たな洞察を与えるだけでなく、より精密なゲノム編集ツールや分子診断技術の開発に新たな可能性を示唆し、Cas12aがPAMや長さの制限を克服できる可能性を示唆している。

[参考] Cas12aのシス切断の機構 (出典イントロダクションから引用)

 Cas9はヌクレアーゼドメインとしてHNHとRuvCの2つのドメインを備えているが、Cas12aはRuvCドメイン1つしか持たないため、そのdsDNA切断プロセスは同時双方向切断ではなく、段階的切断に制限される。一方で、Cas9と同様に、Cas12aもdsDNAを認識するためにプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を必要とするが、PAMとして、TTTVに加えて、非正規のCTTV、TCTV、TTCV などを認識する。

 Cas12aは、crRNAに導かれ、PI (PAM-Interacting) ドメインを介して標的dsDNA上のPAMに結合し、REC領域を介した標的鎖(TS)にcrRNAが結合し、NTS(非標的鎖)とともにRループ構造を形成する。この時点でNTSがCas12aのRuvCドメインに配置され、安定化した後、触媒部位で切断を受ける。その後、RuvCとNucがREC領域に向かって移動し、RuvCによるTSの捕捉を促進する。注目すべきことに、TSの切断速度はNTSのそれよりも著しく遅く、約10倍遅い。TSが一旦切断されると、PAMから遠位で分割されたdsDNAが放出され、RuvCの活性部位が露出する。こうして、Cas12aはどのようなssDNAも捕捉して切断するトランス切断活性を発揮する。このプロセスは、Cas12aのコンフォメーションのアロステリックの変化に依存している。

 TSの長さは、Cas12aの切断活性の活性化にとって極めて重要である。研究によると、トランス切断活性を活性化するには、最低17ヌクレオチド(nt)のTSが必要であり、一方で、TSの長さが24ntに達すると、トランス切断活性が低減する。この低減は、REC2サブドメインの保存された芳香族残基(W355)がR-ループの末端に蓄積し、下流のDNA呼吸中のR-ループの伸長を妨げ、その後のRuvCの活性部位によるTSの捕捉に影響を与え、その結果、シス開裂プロセスに影響を与え、トランス開裂活性を妨げることに起因する。