[出典] "Neonatal Fc receptor is a functional receptor for classical human astrovirus" Haga K [..] Katayama K, Nakanishi A. Genes Cells. 2024-09-12. https://doi.org/10.1111/gtc.13160 [所属] 北里大, 国立長寿医療研究センター, 国立感染症研究所、近畿大

 ヒトアストロウイルス(HAstV)は、世界的に胃腸炎の主な原因となっているが、ウイルスが利用する機能的受容体がまだ同定されていないため、その感受性を支配する分子メカニズムは完全には解明されていない。今回、日本の研究者らが行ったゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーニングにより、新生児Fc受容体(FcRn)が古典的HAstVの機能的受容体であることが同定された。研究者らは、FcRnの欠失が細胞やオルガノイドでの感染を防ぐ一方、FcRnの発現が非感受性細胞でのウイルス侵入を可能にし、HAstVスパイクタンパク質と直接結合することを発見した。昨日Genes to Cells誌に発表されたこの研究結果は、胃腸炎に対する新しい標的療法への扉を開く可能性がある。

 ヒトアストロウイルス(HAstV)は、乳幼児、高齢者、免疫不全者における胃腸炎の世界的な原因である。しかし、ウイルスが利用する機能的受容体がまだ同定されていないため、その感受性を制御する分子メカニズムは完全には解明されていない。

 日本の研究チームが今回、Caco2細胞を用いたゲノムワイドCRISPR-Cas9ライブラリースクリーニングにより、新生児Fc受容体(FcRn)が古典的HAstV(Mamastrovirus     genotype 1)の受容体として機能することを明らかにした。FcRnのサブユニットをコードするFCGRT またはB2M  の欠失によって、Caco2細胞と腸オルガノイド細胞が、HAstV感染に対する抵抗性を獲得した。

 また、ヒトFcRnの発現が非感受性細胞でのウイルス侵入を可能にし、HAstVスパイクタンパク質と直接結合することを発見した。

 本研究で得られた知見は、ヒトアストロウイルスを標的とした新しい治療法の開発に利用され、この世界的な健康問題を治療する新しい戦略を提供できるものと期待される。