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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Epigenetic editing alleviates Angelman syndrome phenotype in mice by unsilencing paternal Ube3a” Liu Ya, Lou S, Liu Yu [..] Huang X, Xiong Z, Yang H, Zhou C. Cell Discovery. 2024-09-17. https://doi.org/10.1038/s41421-024-00727-3 [所属] Shanghai Tech U, Institute of Neuroscience (Shanghai Institutes for Biological Sciences), East China U Science and Technology (Shanghai). 

 重度の神経発達障害を伴うアンジェルマン症候群(AS)は、父親由来のUBE3A が、UBE3A-ATS として知られる内因性のアンチセンスlncRNAによってサイレンシングされ、神経細胞においてUBEA3が完全に欠損することが、原因で発症する。UBE3A-ATS の発現を制御するインプリンティング・センターのSnrpnSnrpn-IC)が、父親では高度にメチル化されているからである。

 最近、低分子阻害剤、RNAターゲティング、人工転写因子、あるいは、CRISPR/SaCas9を介したAAVベクター統合を介してUBE3A-ATSをサイレンシングすることで、父親由来UBE3A を発現させ、ひいては、ASモデルマウスの疾患表現型の緩和を実現した例が報告された。

 上海の研究チームは今回、CRISPR-dCas9に、2種類のDNAメチルトランスフェラーゼの触媒ドメインをリクルートするペプチド・エピトープ [*]を融合させたアンジェルマン症候群”エピゲノム・エディター”を設計・利用した [Fig. 1-a引用右図参照]。このエピゲノム・エディターを導入したASモデルマウスにおいて、父親由来のUbe3a の発現が著しく増加し、モデルマウスのAS表現型が緩和された。

 本研究のエピゲノム編集によるアプローチは、Cas9ヌクレアーゼによる遺伝子編集と異なりDNAを切断することなくASの症状を緩和し、AS治療のための有望な非侵襲的治療戦略を提供する。

スクリーンショット 2024-09-21 20.24.08[*] Supplementary Fig. S1引用右図参照
反復性GCN4ペプチドエピトープ(SunTag)からなる融合複合体をコードするベクターdCas9-SDDを構築し、ペプチドエピトープに一本鎖可変フラグメント(scFv)と融合したde novo DNAメチル化酵素3Aおよび3L(DNMT3A、DNMT3L)の触媒ドメイン(CD)を複数コピー導入する

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