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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Multiplex, single-cell CRISPRa screening for cell type specific regulatory elements" Chardon FM, McDiarmid TA [..] Ahituv N, Shendure J. Nat Commun. 2024-09-18. https://doi.org/10.1038/s41467-024-52490-4 [所属] UW Seattle, Seattle Hub for Synthetic Biology, Brotman Baty Institute for Precision Medicine, Allen Discovery Center for Cell Lineage Tracing, HHMI; Weill Institute for Neurosciences , Dept Bioengineering and Therapeutic Sciences, Institute for Human Genetics (UCSF)

 CRISPR-dCas9をベースとするCRISPRaは、組織・細胞型特異的にプロモーターやエンハンサーを標的とすることで、遺伝子発現を上方制御する人工因子である。ここでは、CRISPRaを高度に多重化し、scRNA-seqを読み出しとして、細胞型特異的なCRISPRa応答性シス調節エレメント (cis-regulatory element: CRE) とそれらが調節する遺伝子を同定する戦略が試みられた。
[注] Shendureらは先行研究で、エンハンサーの機能を、ハイスループットで、偏りなく、細胞内かつ単一細胞の分解能で、より低コストかつより短時間で同定可能とするMosaic-seqと称する手法を、CRISPRiとscRNA-seqを組み合わせることで実現した。今回の手法は、いわば、CRISPRa版のMosaic-seqである。

 多数のgRNAのランダムな組み合わせが多数の細胞のそれぞれに導入され、プロファイリングされた後、テストグループとコントロールグループに分けられ、エンハンサーとプロモーターの両方に対するCRISPRaの摂動が隣接遺伝子の発現に及ぼす影響がテストされた [Fig.1 引用右図参照]。

 この方法を、K562細胞とiPSC由来の興奮性ニューロンの両方において、CRE候補を標的とする493のgRNAのライブラリーに適用したところ、1Mb以内にある標的遺伝子を特異的にアップレギュレートし、隣接する他の遺伝子をアップレギュレートしないgRNAが同定された。

 一貫したパターンとして、CRISPRaに対する個々のエンハンサーの反応性は細胞型によって制限され、遺伝子の活性化を成功させるためには、クロマチンランドスケープや追加のトランス作用因子のいずれかに依存していることが示唆された。

 ここで概説したアプローチは、細胞型特異的に遺伝子を活性化するgRNAの大規模スクリーニングを容易にする可能性がある。

[関連crisp_bio記事]
  • CRISPRメモ_2019/01/05 [第1項] プール型CRISPRiとRNA-seqによるエンハンサー・遺伝子ペアのハイスループット・スクリーニング
  • CRISPRメモ_2018/02/05 [第1項] CRISPR/Cas9遺伝子編集結果を単一細胞RNA-seq(scRNA-seq)で読み出す手法一覧
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