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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Identification of a Guide RNA Targeting an Ultraconserved Element for Evaluation of Cas9 Genome Editors Across Mammalian Species" Gowen B [..] Wei SC. CRISPR J. 2024-09-23. https://doi.org/10.1089/crispr.2024.0053 [所属] Spotlight Therapeutics, Inc  (USA)

 CRISPR-Casゲノム編集を臨床応用するにあたっては、異なる生物種の細胞モデルや動物モデルを利用して、その効果と安全性が評価される。しかし、ガイドRNAの標的となる配列が生物種によって異なることから、その評価には次の課題を解決する必要がある:
  • 異なる生物種の細胞モデルや動物モデル間で編集効率を直接かつ定量的に比較すること、
  • 治療用gRNAの標的が、前臨床研究に必要なモデル生物種では再現できない変異対立遺伝子である場合に、その活性を評価すること。
 Spotlight Therapeuticsの研究チームは今回、前者の課題解決を目指して、細胞ベースおよび動物モデル実験系に一般的に利用されているすべての哺乳類種(ヒト、サル、マウス、ラット、ブタなど)で100%保存されているゲノム領域を標的とするSpCas9用gRNAの同定を試みた。

 具体的には、ヒト、マウス、およびラットのゲノム間で完全に配列が保存されている200bp以上のゲノムDNA配列であるultraconserved elementsUCE)を標的とするSpCas9 gRNAを同定した。ヒトゲノム参照配列の最新版(hg38)から対応する配列を同定し、さらにサイズ(275 bp以上)、GC含量、哺乳類種間での配列保存によってフィルタリングした結果、7つのUCEのリストが得られた。

 UCEは、その同定に利用した系(ヒト、ブタ、マウス)に加え、UCE gRNAは前臨床医薬品開発(ラット、ウサギ、イヌ、霊長類以外)、基礎研究(ゼノパスなど)、農業(ニワトリ、ウシなど)に一般的に用いられる他の生物種とも交差反応性を示した。したがって、UCE標的gRNAは、遺伝子編集コミュニティにとって広く適用可能で有用なツールとなりうる。

 UCE標的gRNAは、ヒト化標的配列をモデル生物または細胞株にノックインするなど、翻訳モデル系を横断して編集活性を評価するアプローチに有用である。また、今回の研究ではSpCas9をベースとするインデル誘導活性とアデニン塩基編集の文脈で評価したが、他のヌクレアーゼ(例えば、AsCas12a、GeoCas9)や編集システム(例えば、シトシン塩基編集、プライム編集、相同性指向性修復)の活性についても、類似のUCEターゲティングアプローチを用いて評価することができる。さらに、UCE gRNAは、UCE自体の生物学的機能をさらに探るためにも利用可能である。
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