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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

- ただし、最近の変異株はPLSCR1を回避可能なように適応している
2024-10-09 原著論文から2つの図を引用
2024-09-30 初稿
[出典] "A genome-wide arrayed CRISPR screen identifies PLSCR1 as an intrinsic barrier to SARS-CoV-2 entry that recent virus variants have evolved to resist" Le Pen J, Paniccia G [..] Rice CM. PLoS Biol. 2024-09-24.
https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3002767 [所属] Rockefeller U,  Columbia U, NYU Grossman School of Medicine, Carl von Ossietzky U Oldenburg, MIT, HHMI, Ruhr U, Laboratory of Human Genetics of Infectious Diseases (Paris), Necker Hospital for Sick Children, Paris Cité U.

 インターフェロン(IFN)は、宿主-ウイルス相互作用の制御と進化において重要な役割を果たしている。ロックフェラー大学を主とする米・独・仏の研究チームが今回、SARS-CoV-2感染に関与するヒト遺伝子を同定するために、まず、IFNの存在下および非存在下でゲノムワイドなアレイ型CRISPR-Cas9ノックアウトスクリーニングを行った。次に、67件の自他の大規模研究を対象として、SARS-CoV-2と相互作用する遺伝子の統合解析を行った。

 SARS-CoV-2COVID-19患者のヒト遺伝学的研究と細胞培養における機能的遺伝学的スクリーニングの両方において、関連性の高い28遺伝子を同定し [Fig. 3引用右図ベン図参照]、その多くはIFN経路に関連していた。これらの中に、IFN誘導遺伝子 (IFN-stimulated gene) であるリン脂質スクランブラーゼ1(PLSCR1が含まれていた。

 PLSCR1はSARS-CoV-2を制限するためにIFN誘導を必要とせず、また、IFNシグナル伝達にも寄与しなかったが、スパイクを介したSARS-CoV-2の侵入を特異的に制限した。PLSCR1を介した制限はTMPRSS2の過剰発現によって緩和されたことから、PLSCR1は主にエンドサイトーシスによる侵入経路を制限していることが示唆された。

 SARS-CoV-2 7さらに、最近のSARS-CoV-2変異体は、その機構は現時点では不明であるが、PLSCR1の制限を回避するように、適応していることが明らかになった。最後に、ヒトに存在するPLSCR1変異体の機能的影響を調べ、最近報告されたPLSCR1と重症COVID-19との関連について考察を加えた [Fig. 7引用右図参照]。
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