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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

- 嚢胞性線維症の原因変異CFTR R553Xの修正 
[出典] "Amphiphilic shuttle peptide delivers base editor ribonucleoprotein to correct the CFTR R553X mutation in well-differentiated airway epithelial cells" Kulhankova K, Cheng AX, Traore S [..] Guay D. Nucleic Acids Res. 2024-09-24. https://doi.org/10.1093/nar/gkae819 [所属] U Iowa, U Missouri, Jackson Laboratory, Harvard U, Johns Hopkins U School of Medicine, Feldan Therapeutics (Canada), TransBIOTech (Canada), Laval U, 

 塩基編集は嚢胞性線維症(CF)の原因となるナンセンス変異を修正する可能性があるが,気道上皮へのデリバリーが課題であった。米国とカナダの産学の研究チームが、以前に報告されたS10ペプチドをベースにした新たな両親媒性シャトルペプチドを創出して、その課題を解決した。

 S10の二次構造の研究から、細胞貫通ペプチド(CPP)ではなく、エンドソーム漏出ドメイン(endosomal leakage domain: ELD)が形成するα-ヘリックスが送達に機能的に重要であることを同定し、ELDを単離し、拡張することによって、Amphiphilic shuttle peptide14.19.44S237と名付けられた新しいシャトルペプチドを創り出した。S237は、緑色蛍光タンパク質の送達効率が低い一方で、培養ヒト気道上皮細胞およびin vivoでのブタ気道上皮へのCas9 RNP送達ではS10を上回った [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]

 十分に分化した初代ヒト気道上皮細胞培養において、S237はABE RNP送達効率を4.6倍まで向上させ、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンスレギュレーター(CFTR)R553X 対立遺伝子を最大9.4%まで修正し、CFTRチャネル機能を非CFレベルに近く回復させた。

 本研究は、ABEによるCFの治療への応用の可能性を示した。
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