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[出典]
  1. NEWS RELEASE "Statement by NIH on Research Misconduct Findings" NIH 2024-09-26. https://www.nih.gov/news-events/news-releases/statement-nih-research-misconduct-findings
  2. NEWS FEATURES "Picture imperfect" Piller C. Science. 2024 Sep 27;385(6716):1406-1412 https://doi.org/10.1126/science.adt3535
1. 研究不正に関する米国立衛生研究所 (National Institutes of Health: NIH) からの発表

 米国国立衛生研究所 (National Institutes of Health: NIH)は、Eliezer Masliah医学博士に対し、2つの研究論文において、異なる実験結果を表す図を構成するパネルにおいて、再使用 (re-use) およびラベルの貼り替え (relabel) を伴う改竄および/または捏造を行ったとして、研究不正行為を認定した。NIHは、然るべき処置がとられるように、2つの学術雑誌にこの調査結果を通知する。

 NIHは2023年5月、同月にHHS Office of Research Integrity(ORI)からの申し立てを受け、研究不正の審査プロセスを開始した。NIHは2023年12月に調査段階を開始し、2024年9月15日にこれらの疑惑の調査を終了し、その結果をHHS ORIに通知した。
  • Masliah博士は、2016年夏、国立老化研究所(National Insitute of Aging: NIA)の神経科学部門 (Division of Neuroscience: DN) の部門長として、また神経変性疾患におけるシナプス損傷を研究するNIH内の研究員として、同機関に加わり、NIH内の研究員として数多くの論文を発表してきた。
  • Masliah博士は現時点では、NIA DNの部門長を務めておらず、NIA副所長のAmy Kekkey医学博士がNIAのDN部門長代理を務めている。
  • NIH入所前にMasliah博士がNIH外の研究機関にて行ったNIH支援による外研究に関わる申し立てについても、今後、NIHの方針および手続きに則り、HHS ORIに照会される。
2. Masliah博士の研究不正に関するScience の特集記事
[注] この記事には"Challenged papers underpin several drugs"という囲み記事が含まれている。

 2段組1ページに続く3段組5ページにわたるこの記事は、Masliahが2016年にNIAにおけるアルツハイマー研究のリーダーそしてNIA所長の最高顧問に抜擢されてから、2024年9月にNIHが研究不正に関するニュース・リリースを出すに至る間、研究不正発覚の経緯、図パネルの不正の複数の具体例と(NIHが公表した2論文にとどまらない)図パネルの問題、アルツハイマーとパーキンソンの2つの研究分野で世界ランキング1桁台がならぶMasliah論文リストの一部、今回の研究不正が神経変性に関する研究と創薬、また、共著者にも及ぼす激震を紹介している。この記事は、2024年10月1日付のNature Briefing 内の"Neuroscientist’s fraud allegation rocks field"の項によれば、読了するに20分を要するとされている。

[以下、特集記事の抜粋]
  • 2016年、米国議会がAD研究のために新たな資金を大量に投入したとき、NIA/NIHはMasliahをこの取り組みの重要なリーダーに抜擢した。昨年度の予算は26億ドルで、NIAの他の部門を合わせた額よりはるかに大きい。
  • Masliahは、UCSDの時代から今日にいたるまで、主として、ADやPDにおけるシナプスの損傷に関する約800の研究論文を発表し、ADとPDの研究分野で最も引用される研究者の一人になり、両疾患に関連するタンパク質であるαシヌクレインなどに関する彼の研究は、基礎科学と臨床科学に影響を与え続けている。
  • この2年間、彼の研究論文の一部に疑義が呈されていた。2023年から、"forensic image sleuths"は、Masliahが中心的な役割を果たしたいくつかの論文にフラグを立て始め、PubPeerパブピア:研究出版物が議論され、しばしば不正行為の疑惑が提起されるオンラインフォーラム)に投稿した。いくつかのケースでは、Masliahや共著者が返信や訂正を行った。その後すぐにScience  誌がこの投稿を発見し、Masliahの地位と立場から、さらに詳しく調べることにした。
  • Science 誌は、神経科学者と法医学者の無償ボランティアチームの協力を得て、調査を進めた。その調査報告書は、UCSDとNIAで行われた彼の研究結果は、「明らかに偽造されたウェスタンブロット(タンパク質の存在を示すための画像)や脳組織の顕微鏡写真で、埋め尽くされていた」と断じた。数多くの画像が不適切に再利用され、時には異なるジャーナルで数年おきに発表され、異なる実験条件が記述された論文にまたがっているようである。これは、前項にあるNIHの声明よりもはるかに多い 1997年から2023年の間に発表された132編の研究論文を分析した結果である。
  • これらの研究論文の中には、治療候補薬の開発と試験を支えるものも多く含まれている。例えば、FDAから臨床試験を進める許可を得ていた抗体医薬品prasinezumab (プラシネズマブ)に関する4つの基本的な論文(開発元であるProthenaのWebサイトに引用されている)はすべて、操作された画像で埋め尽くされていた。そして、2022年にThe New England Journal of Medicine 誌に報告された316人のPD患者を対象とした試験では、プラシネズマブはプラセボと比較して有益性を示さなかっただけでなく、この抗体医薬の点滴を受けた群は、プラセボの点滴を受けた群よりもはるかに多くの吐き気や頭痛などの副作用に苦しんだ。
  • Science 誌のレビューに同意した11人の神経科学者は唖然とした。ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学の神経科学者Christian Haassは言う。「私は、椅子から転げ落ちるような思いでした」。マウントサイナイ・AD研究センターの著名な神経科医であるSamuel Gandyは、ビデオインタビューに応じた際に、目に見えて震えつつ「何百枚もの画像が、何年もの間、操作され続けていたはずです」とコメントした。
  • Masliahは132編のすべての研究論文で唯一の共通著者であり、共著論文において、最初か最後の著者の位置を占めている。これらの立場は、他の著者が貢献しているにもかかわらず、彼がその論文の大部分を書いたか、第一の責任を負っていることを意味する。Science誌の取材に応じた神経科学者たちによれば、少なくとも、疑わしい画像が大量にあることは、Masliahの研究全体に対する信頼を損なうものだという。この書類に目を通した11人全員が、NIH、学術誌、資金提供者、そしてUCSDによって、彼のすべての問題論文が調査されるべきだという意見で一致している。
  • 以前はNIHの他の2つの研究所を率い、2015年までAAAS(サイエンスの出版社)を率いていたAlan Leshnerによれば、Masliahは部門長としてNIAの神経科学助成金に影響力を発揮できる立場にあった。「Masliahのリーダーシップと、医薬品開発パイプラインを含むこの分野への影響力は甚大です」と、この報告書の作成に協力した一人であるヴァンダービルト大学の神経科学者マMatthew Schragも言う。
  • テキサス大学サンアントニオ校の神経科学者であり、Journal of Alzheimer’s Disease誌の編集長であるGeorge Perryは、神経変性疾患の他の専門家同様、Masliahの研究は影響力があり、高く評価されていると述べている。英国Digital Science社の学術研究データバンクであるDimensions Analyticsのデータ分析によると、ADとPDに関連する主要テーマにおいて、Masliahは世界の研究者トップ10に頻繁にランクインしており、論文数と被引用数で1位になることも多い。
  • Masliahの最も影響力のある研究は、さまざまな神経変性疾患を模倣するように遺伝子操作されたマウスにおけるシナプス障害の基礎研究である。Science 誌のためにMasliahの研究論文の査読を行ったPerryは言う。疑問視された132の論文は、述べ18,000件以上の研究論文に引用されており、その多くは一流の学者によるものである。「今となっては、あの研究はおそらく捏造されたものだと思います」とPerryは付け加え、「疑問視されている論文の影響力」の問題は重大だとした。 
[AD研究論文に関する研究不正関連crisp_bio記事]
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