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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "CRISPR/Cas9 editing of NKG2A improves the efficacy of primary CD33-directed chimeric antigen receptor natural killer cells" Bexte T, Albinger N [..] Ullrich E. Nat Commun. 2024-09-30. https://doi.org/10.1038/s41467-024-52388-1 [所属] Goethe University Frankfurt, Institute for Transfusion Medicine and Immunohematology, University Cancer Center (Frankfurt am Main), Technical U Darmstadt, German Cancer Research Center (DKFZ) (DKTK) and the partner sites, U Freiburg, Charité – Universitätsmedizin Berlin, Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG, Cardio-Pulmonary-Institute,
Alexandria U (Egypt)

[背景]

 新規
CAR-T細胞治療薬の研究により、B細胞由来の悪性腫瘍の治療薬として複数の製品が承認されている。米国FDAおよび欧州医薬品庁(EMA)が承認したCAR-T細胞治療薬に加え、CD19を標的とするCAR-ナチュラルキラー(NK)細胞も臨床試験において安全であり、CAR-T細胞と同様の有効性が報告されている [1, 2]。しかし、急性骨髄性白血病(AML)治療用のCAR製剤の開発は、疾患の不均一性とAMLに特異的な抗原がないため、より困難であった。

 とはいえ、CARベースのAML細胞治療に有望な抗原が存在しないわけではない。そのひとつはCD33である。CD33AML患者の最大88%で白血病芽球や白血病誘発細胞に発現している。また、前臨床試験でCD33特異的CAR-T細胞の抗AML活性が証明されている。

 養子移入されたNK細胞療法には、CAR-T細胞療法に対して有利な点がある。NK細胞はT細胞よりも寿命が短く、副作用が少なく、CAR非依存的な殺傷能力を有していることが、NKG2Dリガンドを発現するAMLにおいて実証されている。

 最近の前臨床研究において、Goethe University Frankfurtを主とする研究チームはCD33指向性CAR (CAR33)-NK細胞を作製し、異種移植モデル生体内においてCD33+AML細胞に対する抗白血病活性の増加を示した。しかし、CAR33-NK細胞の有効性は、免疫抑制的な腫瘍微小環境における免疫チェックポイントのアップレギュレーションによって制限される可能性がある。事実、NK細胞の活性化は、細胞表面に発現する様々なレセプターのレパートリーによって媒介される活性化シグナルと抑制シグナルのバランスによって厳密に制御されている。その中でも重要な抑制性レセプターは、KLRC1 遺伝子にコードされるNKグループ2ANKG2A)である。

 NKG2Aは非古典的MHC Iタンパク質であるHLA-Eに結合し、悪性細胞で過剰発現することが多い。今回の著者らを含む複数の研究チームが、monalizumabなどのNKG2A遮断抗体やCRISPR/Cas9を用いたNK細胞におけるKLRC1の破壊を用いてNKG2A-HLA-E軸を破壊すると、多発性骨髄腫に対するNK細胞の細胞傷害性が著しく増強されることを示してきた。

 研究チームはさらに、様々なAML細胞株や原発性AML芽球が高レベルのHLA-Eを発現していること、そしてHLA-Eの発現は、標的細胞との接触後にCAR-NK細胞から高濃度に分泌されることが知られているサイトカインであるIFN-γ25への曝露後に上昇することを観察した。したがってNKG2A-HLA-E軸がCAR-NK細胞の疲弊に重要な役割を果たしている可能性があり、CD33指向性CAR-NKにおいてNKG2Aをコードする遺伝子KLRC1をノックアウトすることで、抗AML殺傷活性が向上するという仮説を立てた。

[成果]

 CAR33-KLRC1ko-NK本研究では、レンチウイルスによる
CAR33導入CRISPR/Cas9を介したKLRC1遺伝子破壊を組み合わせることにより、二重修飾NK細胞を作製した [Fig. 1引用右図参照]。得られたCAR33-KLRC1ko-NK細胞は、CD33+/HLA-E+細胞株 OCI-AML2 および患者由来の初代芽球細胞に対して、CAR33-NK細胞またはKLRC1ko-NK細胞と比較して有意に高い細胞傷害能力を示した。

 単一細胞のトランスクリプトームとエピトープを測定した結果、CAR33-NK細胞および二重改変CAR33-KLRC1ko-NK細胞における活性化、成熟、細胞傷害性遺伝子発現パターンが明らかになり、殺傷能力の向上が認められた。興味深いことに、CAR33-KLRC1ko-NK細胞は、単一修飾KLRC1ko-NK細胞やCAR33-NK細胞と比較して、IFN-γ分泌の増加を示し、これは標的細胞との接触後も維持された。

 今回の発見は、CAR-NK工学とゲノム編集を組み合わせて阻害性レセプターを除去することにより、NK細胞表面レセプター組成を変化させる臨床的可能性を強調するものである。高度な改変は様々な可能性を開くものであり、アンメット・メディカル・ニーズのある疾患をターゲットとする免疫細胞ベースの治療法をデザインする際には考慮するに値する。

[引用文献]

  1.  CD19 陽性リンパ系腫瘍に対する CAR 導入ナチュラルキラー細胞の使用” (Use of CAR-Transduced Natural Killer Cells in CD19-Positive Lymphoid Tumors. E. Liu et al. NEJM. 2020-02-05) NEJM日本語版アブストラクト (南江堂 洋書部)
  2. Safety, efficacy and determinants of response of allogeneic CD19-specific CAR-NK cells in CD19+ B cell tumors: a phase 1/2 trial” Marin D, Li Y, Basar R, Daher M [..] Rezvabu K. Nat Med. 2024-01-18.
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