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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] CDK (Cyclin-Dependent Kinase / サイクリン依存性キナーゼ);パルボシクリブ (Palbociclib: Ibrance / イブランス)
[出典] "A genome-wide CRISPR/Cas9 knockout screen identifies SEMA3F gene for resistance to cyclin-dependent kinase 4 and 6 inhibitors in breast cancer" Kawai Y, Nagayama A, Miyao K et al. Breast Cancer. 2024-10-01. https://doi.org/10.1007/s12282-024-01641-y [所属] 慶応・医

 パルボシクリブは、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行乳癌患者に対して、内分泌療法との併用で標準治療の一つとして使用されるCDK4/6阻害剤である。CDK4/6阻害剤に対する耐性機序として、Rb遺伝子の欠損やp16遺伝子の増幅などのいくつかの遺伝子変化が知られているが、耐性の包括的な状況はまだ完全には解明されていない。本研究の目的は、HR陽性HER2陰性乳癌におけるCDK4/6阻害剤に対する新規耐性遺伝子を同定することである。

 慶応大の研究チームは今回、ヒト乳腺がん由来の細胞株MCF7を対象にしたゲノムワイドCRISPR/Cas9 KOスクリーンを行い、NGS解析およびGSEA解析により耐性候補遺伝子を選択し、細胞生存率アッセイおよびマウス異種移植モデルにより検証した。

 スクリーニングから耐性遺伝子として、RETTIRAPGNRH1SEMA3FSEMA5AGATA4NOD1SSTR1 の8種類が同定された。この中で、SEMA3F のsiRNAによるノックダウンは、in vitroおよびin vivoで、CDK4/6阻害剤存在下での細胞生存率を有意かつ一貫して増加させた。さらに、SEMA3F をノックダウンしたパルボシクリブ処理細胞では、p-Rbのレベルが維持され、サイクリンキナーゼの活性上昇によって耐性が引き起こされることが示された。
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