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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] 
論文 "SARS-CoV-2-specific plasma cells are not durably established in the bone marrow long-lived compartment after mRNA vaccination" Nguyen DC [..] Lee FE. Nat Med 2024-09-27. https://doi.org/10.1038/s41591-024-03278-y [所属] Emory U, Atlanta Veterans Affairs Healthcare System (兼任)
Scienceinsider "Missing immune cells may explain why COVID-19 vaccine protection quickly wanes" Cohen J. Science. 2024-10-11. https://doi.org/10.1126/science.zz6to68
[crisp_bio注] COVID-19ワクチン接種の8回目は、選択の余地なく、ファイザー社製のコミナティーだった。MeijiSeikaファルマのコスタイベの方が「長持ちしそうな気がして」試したかったのだが。

 オーストラリアの研究チームは、SARS-COV-2に対するmRNAワクチンを複数回接種し、場合によってはウイルスに感染した19人を対象とする研究から、mRNAワクチンによる免疫が数ヶ月程度しか続かない理由は、長期生存形質細胞 [*] が誘導されないためであるという結論に至った。
[*] 感長期生存形質細胞(long-lived plasma Cell: LLPC)は骨髄に存在し、自然感染またはワクチン誘導による免疫記憶を長期間維持する細胞である。

[詳細]

 SARS-CoV-2 mRNAワクチンは重症化予防に有効であり、また、SARS-CoV-2に特異的な形質細胞が骨髄に認められるにもかかわらず、抗体は数ヶ月の間に急速に減少する。研究チームはこのパラドックスを探るために、ワクチン接種後2.5-33ヵ月の健常成人19人のコホートを対象に、骨髄内のLLPCと非LLPCサブセットにおけるインフルエンザ、破傷風、SARS-CoV-2のそれぞれに特異的な抗体を分泌する細胞( antibody-secreting cells: ASC)を測定した。
  • LPCサブセットにおいて、インフルエンザおよび破傷風特異的ASCは容易に検出されたが、SARS-CoV-2特異性ASCはほとんど認められなかった。
  • インフルエンザ、破傷風、SARS-CoV-2の非LLPC:LLPC比は、それぞれ0.61、0.44、29.07であった。
  • 最近の感染とワクチン接種歴がPCRで証明された5人の患者では、SARS-CoV-2特異的ASCはLLPCにはほとんど認められなかった。骨髄ASC培養上清から分泌された抗体についても同様の結果を示した。
  • インフルエンザおよび破傷風に特異的な血清IgG力価は、IgG LLPCsと相関していたが、SARS-CoV-2に対する血清IgGレベルは、ワクチン接種後3~6ヵ月以内に低下し、IgG非LLPCsと関連していた。
 これらの結果から、研究チームは、SARS-CoV-2特異的血清抗体が急速に低下する現象は、mRNAワクチン接種後の骨髄内 LLPCsの欠如によって説明できるとした。

 同様な現象が、SARS -CoV-2に自然に感染した患者からも報告されている [Tehrani et al., J Infect Dis 2024]。メリーランド大学のMohammad M Sajadiの研究チームは、SARS-CoV-2に感染したがワクチン接種を受けたことのない20人の骨髄を調べ、破傷風に特異的なLLPCと比較して、SARS-CoV-2に特異的なLLPCが「欠損」していることを報告し、当時「大きな疑問はその理由だ」としていた。

 今回、F. Eun-Hyung Lee教授らの研究チームは「SARS-CoV-2の表面の特徴がその答えになるかもしれない」と言う。LLPCは、ナイーブB細胞がウイルスやその一部(スパイクタンパク質など)に遭遇した後に出現する。B細胞が成熟するにつれて、侵入者によりよく結合する、より洗練された抗体が作られる。最初の感染後、メモリーB細胞は血液中をパトロールし続け、サブセットは形質細胞に分化する。これらの細胞の一部は骨髄に移動し、長期的な抗体産生を継続する。

 B細胞はY字型のレセプターを持ち、病原体を識別するとウイルス表面タンパク質に結合する。Y字の両分岐が同じ病原体タンパク質に結合すると、「架橋」と呼ばれる現象が起こり、B細胞がLLPCに変化する。しかし、SARS-CoV-2の電子顕微鏡像から、スパイクは約25 nm 離れており、1つのB細胞レセプターが一度に2つのスパイクに結合するには距離がありすぎる。感染細胞から提示されるスパイクタンパク質も、同様に広い感覚間隔で存在していると想定されている。その結果、B細胞は架橋されず、LLPCも発生しないのだと研究チームは指摘している。

 今後の対策として、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の間隔が狭い擬似的なウイルスを標的とするワクチンの開発が考えられるが、体内で持続時間が長いワクチンの開発の方が現実的かもしれない。

[crisp_bio注] 臨床試験からは、レプリコンワクチンであるコスタイベはコミナティーよりも持続性に優れているという結果が報告されている。
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