[出典] "Transcriptome-wide splicing network reveals specialized regulatory functions of the core spliceosome" Rogalska M [..] Valcárcel J. Science. 2024-10-31. https://doi.org/10.1126/science.adn8105 [所属] Centre for Genomic Regulation (CRG), U Pompeu Fabra, Institució Catalana de Recerca i Estudis Avançats (ICREA), RemixTherapeutics (USA)
スプライソソームは、真核生物のmRNA前駆体上で順次組み立てられてイントロンを除去する(プレmRNAスプライシング)複雑な分子機構であり、多くの病態で変化する生理学的に制御されたプロセスである。スペインと米国の産学共同研究チームが今回、ヒトがん細胞において、305種類のスプライソソーム構成因子と制御因子を系統的にノックダウンした際のトランスクリプトーム・ワイドの解析を行い [論文Fig.1参照]、様々なクラスの選択的スプライシングを支配する機能的スプライシング因子ネットワークを再構築し、一連のスプライシング因子が相互に制御する複雑な回路が機能していることを、発見した。
U4/U6.U5トリ核内低分子リボ核タンパク質複合体(U4/U6.U5 tri–small nuclear ribonucleoprotein: tri-snRNP)[*] の後期集合体の正確な構造がスプライス部位のペアリングを制御していることが明らかになり、U1 snRNPのタンパク質構成要素間で、エクソンの定義と選択的(alterbative)5′スプライス部位の選択を制御するための前例のない役割分担が発見された。その結果、スプライシング制御の生理学的および病理学的メカニズムを探るためのリソースが得られた。
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2017-05-15 クライオ電顕技術の進歩が加速するスプライソソーム構造解析
2017-04-28 クライオ電顕法で捉えたスプライシング第一段階の構造基盤
[詳細]
スプライソソームは、5つの小さな核内リボ核タンパク質粒子(U1、U2、U4、U5、U6 snRNPs;U4/U6.U5はtri-snRNP複合体を形成する)と100以上のその他のタンパク質から構成される。
これらの因子は、一連の組成と構造の極めてダイナミックな変化を通して各イントロン上に、E、A、B、Bact、C、C*複合体として集積し [右図は複数snRNPの結合状態例]、イントロンの除去と隣接するエクソン配列のスプライシングにつながる2つのRNA触媒エステル交換反応を行う。この選択的スプライシング(alternative splicing: AS)は、ヒト遺伝子の90%以上で観察され、細胞の分化と恒常性の制御に寄与しており、ASの変化は、遺伝病から神経変性や癌に至るまで、幅広い病態の原因や進行に関与する。
これらの因子は、一連の組成と構造の極めてダイナミックな変化を通して各イントロン上に、E、A、B、Bact、C、C*複合体として集積し [右図は複数snRNPの結合状態例]、イントロンの除去と隣接するエクソン配列のスプライシングにつながる2つのRNA触媒エステル交換反応を行う。この選択的スプライシング(alternative splicing: AS)は、ヒト遺伝子の90%以上で観察され、細胞の分化と恒常性の制御に寄与しており、ASの変化は、遺伝病から神経変性や癌に至るまで、幅広い病態の原因や進行に関与する。 ASがタンパク質の生成ひいてはヒトの生理と病理に決定的な影響を与えることは明らかにされてきたが、スプライス部位の選択を制御する分子機構はまだ十分に理解されていない。古典的な見解では、スプライシング制御因子はmRNA前駆体に存在する制御配列(エンハンサーとサイレンサー)に結合し、イントロン境界(それぞれ5′と3′スプライス部位)で初期に組み立てられるコアU1とU2 snRNPの複合体Aの組み立てを調節する。しかしながら、スプライソソームにおけるその後の複雑な構造変化が、スプライス部位の選択制御にどの程度利用されるかは、不明であった。
研究チームは、スプライシング・プロセスの制御におけるスプライソソームの構成要素と制御因子の役割を系統的に研究するために、HeLa細胞からポリアデニル酸 (polyA)+ RNAサンプルを精製し、その中で305種類のスプライシング関連タンパク質コード遺伝子(splicing-related protein-coding genes: SF)の発現を、プールされたsiRNAを用いて個別にノックダウン(KD)した。SFには、スプライソソームのコア成分(メジャー・スプライソソームとマイナー・スプライソソームの両方)と関連因子、ASにおける制御機能が知られているRNA結合タンパク質、スプライシング調節に関連するRNA修飾酵素とクロマチン関連因子が含まれていた。
この(polyA)+ RNAコレクションは、mRNAのディープシーケンス(以下、mRNA-seq)解析[ペアエンド、125ヌクレオチド(nt)長、100Mイルミナリード/サンプル]に供され、続いて、遺伝子発現とASを、それぞれ、edgeRとVAST-Toolsを利用して、定量された。これにより、エクソンスキッピング(exon skipping: ES)、5′または3′スプライス部位の選択(Alt5′ssまたはAlt3′ss)、およびイントロン保持(intron retention: IR)イベントを含む270,000以上のASイベント(すべてのKDにわたって十分なリードカバレッジで測定された82,000以上を含む)を評価することに成功した [論文Fig.1 A参照]。また、RNA結合タンパク質に焦点を当てたENCODEプロジェクト共通するSFの限られたサブセットについて、他の2つのがん細胞株でKDを行ったところ、同様の効果が観察された。
ジーンオントロジー解析の結果、SFおよびRNA結合タンパク質をコードする遺伝子は、SF KDによりASレベルで最も頻繁に影響を受けることが明らかになった [論文Fig. 2 A参照]。これまでの研究で、他のSFによるSF遺伝子の制御が報告されているのに対し、今回、ヒト細胞における広範で緻密な相互制御ネットワークが明らかになり、これは、スプライシング異常の間接的影響を包括的に解析するための特異的なツールに繋がる。平均して、SFをコードする遺伝子のASイベントは、6つのSF遺伝子のKDによって大きく変化する。平均的なSF KDは他の24のSF遺伝子のASに影響を与え、スプライシング因子3bサブユニット1(SF3B1)、CWC22、XAB2などの因子は他の100以上のSF遺伝子に影響を与える [論文Fig. 2 B参照]。SF遺伝子の80%はASを介して他のSFによって制御され、そのうちの43%はASの自己調節ループに関与している [論文Fig. 2 C参照]。SF遺伝子におけるESの約50%、60%以上のAlt5′ssまたはAlt3′ssイベントは、オープンリーディングフレーム(ORF)を破壊しないため、異なるタンパク質アイソフォームをコードするmRNAにつながる [論文Fig. 2 DとE参照]。U2 snRNPやB複合体構成タンパク質のようなある種のSFクラスは、転写-輸送複合体(TREX)構成タンパク質、ヘリカーゼ、A複合体関連タンパク質のような他の特定のSFクラスに優先的に影響を与える傾向があり、このことは、細胞の恒常性を維持するためにスプライシング活性の低下を緩衝する役割を果たす、相互制御ネットワーク内の機能的構造を示唆している [論文 Fig. 2 F参照]。
[図一覧]
- Fig. 1. Transcriptome-wide analyses upon systematic KD of 305 splicing and splicing-related factors.
- Fig. 2. The splicing cross-regulatory network.
- Fig. 3. Functional network accurately captures known physical and functional associations and identifies new ones.
- Fig. 4. Functional relationships across diverse classes of AS events.
[関連論文]
- "A sequential binding mechanism for 5′ splice site recognition and modulation for the human U1 snRNP" White DS, Dunyak BM, Vaillancourt FH, Hoskins AA. Nat Commun. 2024-10-10. https://doi.org/10.1038/s41467-024-53124-5 [所属] U Wisconsin-Madison, Remix Therapeutics
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