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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "ReaL-MGE is a tool for enhanced multiplex genome engineering and application to malonyl-CoA anabolism" Zheng W, Wang Y, Cui J [..] Stewart F, Zhang Y, Bian X, Wang X. Nat Commun. 2024-11-12. https://doi.org/10.1038/s41467-024-54191-4 [所属] Shandong U, Tianjin U Science and Technology, Yuelushan Laboratory, Technische U Dresden/U New South Wales.

 微生物の代謝工学で遭遇する複雑性が、未だ、代謝工学の予測や設計の障害になっている。これらの複雑性を解明するには、従来の遺伝学を超える戦略が必要である。中国を主とする研究チームが今回、二本鎖(ds)DNAを用いた多重突然変異誘発法を用いて、一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドを用いた多重レパトアを拡張するReaL-MGE (Recombineering and Linear CRISPR/Cas9 assisted Multiplex Genome Engineering)を開発した。

 ReaL-MGEは、CRISPRが促進する組換え (recombineering) と逆選択 (counter selection)、エキソヌクレアーゼVII(ExoVII)の操作、および複数の直鎖状 (linear) gRNA遺伝子カセットを用いて、dsDNAを用いた多重突然変異誘発を実現する。

 ReaL-MGEを利用して、大腸菌、Schlegelella brevitalea およびPseudomonas putida ゲノムへの複数のキロベーススケールの配列の同時挿入に成功し、ReaL-MGEにより、多数の大きなDNA配列の正確な操作が可能なことが実証された。 また、全ゲノム配列決定により、いずれにおいてもオフターゲット変異が誘発されないこと、ひいては、ReaL-MGEによる変異誘発の精度が高いことが確認された。

 これら3つのゲノムにおいて、細胞内のマロニル-CoAレベルを増強するReaL-MGEのアプリケーションは、それぞれ26倍、20倍、13.5倍の増加を達成し、それによって標的ポリケチドの収量を1桁以上促進した。

  さらにReaL-MGを利用して、S. brevitaleaを、制限された炭素源(藁由来のリグノセルロース)を利用したマロニル-CoAのレベル上昇に適応させ、リグノセルロースからの抗がん二次代謝物エポチロンの生産を実現した。

 dsDNAを用いた多重突然変異誘発によって、付加的な機能を完全にコードできる長いセグメントを組み込むことが可能になったが、さらに、dsDNAの生成にPCRを利用することで、柔軟な設計が可能になる。

 ReaL-MGEは、HRの効率を改善し、選択マーカーへの依存や複数のgRNA共発現プラスミド構築の困難性などの問題を回避することにより、細菌多重ゲノム工学を大きく発展させた。
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