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[出典] "CRISPR-AsCas12f1 couples out-of-protospacer DNA unwinding with exonuclease activity in the sequential target cleavage" Song X, Chen Z [..] Sun B. Nucleic Acids Res. 2024-11-12. https://doi.org/10.1093/nar/gkae989 [所属] ShanghaiTech U, Fudan U, Shanghai Jiao Tong U, Shanghai Jiao Tong U School of MedicineShanghai Institute of Biochemistry and Cell Biology, U CAS, Shanghai Institute of Organic Chemistry, Zhejiang Lab

 V-F型CRISPR-Cas12fは、超コンパクトなRNAガイド型ヌクレアーゼ群で、生体内遺伝子治療のための多用途なプラットフォームを提供する。既知のCas12fタンパク質のうち、Acidibacillus sulfuroxidans Cas12f (AsCas12f1, サイズ 422 aa)はプラスミド干渉活性を備えゲノムエディターとして開発利用されている。広く用いられているSpCas9やAsCas12aと比較して、AsCas12f1ではインデル活性が抑制され、さらに、enAsCas12f1やAsCas12f1-v5.1のような人工AsCas12f1システムは、in vitroでのDNA切断活性やin vivoでのゲノム編集効率が高く、DNA編集ツールとしての性能向上に期待が持てる。

 Cas9とCas12はある意味で対照的なヌクレアーゼであるが、AsCas12f1は興味深いことに、プロトスペーサー領域内の標的鎖(TS)と非標的鎖(NTS)DNAの双方に単一の切断部位を導入するCas9やCas12aとは異なり、3箇所に非対称なDNA切断を誘導する:3箇所の切断部位のうち、1つだけがプロトスペーサー領域内に位置し、NTS DNA上のPAMの約12 nt下流に位置する(NTS-Pと呼ばれる); 残りの2つは、NTS(プロトスペーサーの約5 nt下流、NTS-Oと呼ばれる)とTS(プロトスペーサーの約3 nt下流、TS-Oと呼ばれる)DNA上のプロトスペーサーDNAの外側に位置し、その結果、二本鎖切断後にDNAに2つの粘着末端が形成される。一方、クライオ電顕法による再構成構造から、sgRNAと標的DNAに結合したAsCas12f1タンパク質が非対称に二量体化していることが明らかにされた。AsCas12f1の二量体には2つのRuvCドメインが存在するが、DNA切断活性を持つのは1つだけである。これらの貴重な知見にもかかわらず、AsCas12f1の単一のRuvCドメインによるDNA標的切断を支配するダイナミックなメカニズムはまだ解明されていない。

 中国の研究チームは今回、1分子アプローチ(smFRET)とアンサンブルアプローチを組み合わせることで、AsCas12f1とDNAの動的相互作用をリアルタイムで系統的に解析し、人工AsCas12f1-v5.1のそれと比較した。これらのアプローチにより、AsCas12f1の特異的なDNA結合、巻き戻し、切断ステップを解明し、各ステップの動態の定量化が実現された。

 その結果、プロトスペーサーDNAの巻き戻しおよびNTS DNAのニッキングに続いて、AsCas12f1は驚くべきことに、ニッキングから双方向へとエキソヌクレアーゼ活性を発揮していくことが明らかになった。AsCas12f1 Figure 6その後、DNAの巻き戻しがプロトスペーサーの外側の領域に拡大し、AsCas12f1はプロトスペーサーの領域の外へと巻き戻されたDNAを徐々に消化する。 最終的に、プロトスペーサーの3 nt下流でTS DNAが核酸分解により切断され、AsCas12f1-sgRNA-DNA複合体はプロトスペーサーに隣接するモチーフ遠位端から容易に解離し、DNAの二本鎖切断が残る  [Figure 6引用右図参照]。

 重要なことは、AsCas12f1が、プロトスペーサーとプロトスペーサー外のDNA切断をプライミングする2段階のDNA巻き戻し機構を進化させてきたことである。Mg<2+>は、DNAの巻き戻しと切断の間の緊密な結合において重要な制御的役割を果たしている。野生型(WT)AsCas12f1と比較して、AsCas12f1-v5.1はプロトスペーサーNTS DNAの処理速度が速いが、DNAターゲティングとプロトスペーサー外DNAの処理速度は同等であった。これらの知見から、AsCas12f1がDNA標的切断のためにエキソヌクレアーゼとエンドヌクレアーゼの両方の活性を持ち、2段階のDNA巻き戻しを行う詳細なモデルが提案された。

 今回の発見は、DNA巻き戻し-核酸切断を触媒するAsCas12f1のダイナミックな機序を明らかにし、Cas12fベースのゲノム編集ツールの実用的な改良に役立つ。

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