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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注]イントロダクション/introduction(同種の異なる系統に導入/遺伝子導入);イントログレッション/introgression(異種の系統に導入/遺伝子移入)
[出典] "Cas9/guide RNA-based gene-drive dynamics following introduction and introgression into diverse anopheline mosquito genetic backgrounds" Tushar T [..] Carballar-Lejarazú R. BMC Genomics 2024-11-13. https://doi.org/10.1186/s12864-024-10977-w [所属] UC Irvine, UC Davis

 近年、世界的なマラリア罹患率が下がり止まってきたことから、改めて、マラリア原虫を媒介するハマダラカを防除する新手法が求められている。その中で、Cas9-ガイドRNA (gRNA)をベースとする遺伝子ドライブのアプローチが、ハマダラカの個体数の抑制や、ハマダラカのマラリア原虫に対する抵抗性の向上を目的として、試行されている。

 Cas9/gRNAをベースとする遺伝子ドライブは、Cas9ヌクレアーゼにより染色体が標的部位で切断された後、生殖細胞で相同性指向性修復(HDR)が進行し、対象生物集団において、遺伝子ドライブ因子の遺伝への偏よりが広がっていく機構をベースとしている。最適なドライブシステムは、HDRを介した遺伝子変換が非常に効率的で、エラー率が最小でなければならない。カリフォルニアを拠点とする研究チームは、このような特性を備えた遺伝子ドライブシステムAgNosCd-1を開発しガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae s.l.)G3株にてその性能を検証していたが [*]、AgNosCd-1を現場に適用するためには、さまざまな遺伝的背景を帯びたハマダラカ系統に通用すること検証する必要がある。
[*] 
"Next-generation gene drive for population modification of the malaria vector mosquito, Anopheles gambiae". Rebeca Carballar-Lejarazú R [..] James AA. Proc Natl Acad Sci USA 

 研究チームは今回、AgNosCd-1を地理的に多様なAnopheles gambiae 株 3種、An. coluzzii 株とAn. arabiensis 株それぞれ1種、に遺伝子導入または遺伝子移入した。F2ハイブリッドにおける顕性マーカー遺伝子の存在によって決定される全体的な遺伝ドライブは、生存可能な子孫を生んだすべての遺伝的背景においてメンデルの遺伝比率をはるかに超えていた。

 AgNosCd-1をAn. arabiensis Dongola株に導入した場合、ホールデン(Haldane)の法則が確認され、F1雑種雄の不稔がF2雑種子孫の生産を妨げた。F1雑種雌の戻し交配は、実験デザインをすべての遺伝的背景で一貫性を保ち、遺伝子ドライブのダイナミクスを混乱させる可能性のある母体で生成された突然変異対立遺伝子を避けるために行われなかった。例外的な表現型を示したF1およびF2の蚊の標的部位のDNA配列を決定したところ、HDRではなく非相同末端結合(NHEJ)に起因する遺伝子ドライブによる突然変異が明らかになった。

 本研究において、AgNosCd-1ドライブシステムが頑健であり、多様なAn. gambiae s.l.実験室株において、NHEJ突然変異率が低く、高いドライブ継承率と遺伝子変換効率を持つとことが、確認された。
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