[出典] "Repurposing endogenous type I-E CRISPR-Cas systems for natural product discovery in Streptomyces" Zhou Q [..] Ye Y, Luo Y. Nat Commun. 2024-11-13. https://doi.org/10.1038/s41467-024-54196-z [所属] Tianjin U, Haihe Laboratory of Sustainable Chemical Transformations, Shanghai Institute of Materia Medica CAS, West China Hospital (Sichuan U)
シーケンシング技術の発展に伴い、微生物のゲノムデータ量は急速に拡大し、天然物の生合成遺伝子クラスター(BGC)の豊富なレパートリーが開示された。しかし、推定天然物の90%が、生合成の引き金となる未知の生体内制御シグナルを捉えない限り、通常の実験室培養条件下では生産されないことが明らかになった。したがって、クリプティックな(cryptic )BGCを活性化するツールを開発することが、新規な天然物を探索するための有効な戦略となっている。
クラス2 CRISPRシステムのCas9やそのホモログであるCas12aは、複数のドメインを持ち、ヌクレアーゼ活性とヘリカーゼ活性を備えており、様々な生物のゲノム編集に広く用いられてきた。ストレプトマイセスでの応用も報告されており、大きな断片の欠失や挿入、大規模なBGCの同定などの例がある。また、クリプティックBGCのin situ発現を駆動するために適用され、5つのStreptomyces株で4つのBGCの活性化につながった例も報告されている [Nat Chem Biol, 2017]。
また、ヌクレアーゼ活性を欠いたCasタンパク質をベースとするCRISPRiやCRISPRaが開発され、標的遺伝子の転写活性を調節することが容易になった。しかし、dCas9ベースのCRISPRiシステムは、特定のストレプトマイセス株で機能性を示したが、dCas9ベースのCRISPRaシステムは、一般的に、大多数のストレプトマイセス株で限定的な有効性を示し、最近では特定のストレプトマイセス株でのみ成功したという報告があるにとどまっている [Nucleic Acids Res, 2022]。
すでに遺伝子操作に広く利用されているCas9やCas12a以外の多様なCRISPRシステムを探索することは、ユニークな特徴を持つ細菌遺伝子を制御するツールボックスを拡張する。原核生物の大半が固有のCRISPRシステムを持っており、人工的な因子ではなくこれらの天然の因子を利用することで、細菌宿主内でより効率的で的を絞った遺伝子操作につながる可能性がある。最近の詳細な研究から、ほとんどのストレプトマイセス菌株がクラス1タイプI-E CRISPRシステムを保有していることが明らかになった。また、タイプI-E CRISPRシステムをベースにするCRISPRaが、大腸菌において機能を発揮することが報告され、転写制御のためのツールとして利用可能なことが示された。これらの報告は、ストレプトマイセス内在のクラス1 CRISPRシステムが、転写制御のためのツールとして開発される可能性を示唆した。
中国の研究チームは、ストレプトマイセスのタイプI-E CRISPR associated complex for antiviral defense(Cascade)を系統的に探索し、それに基づいて一連のリプレッサー/アクチベーターを設計し、非モデルのストレプトマイセス株のクリプティックBGCを活性化するのに有効であることを実証した。具体的には、21種類のBGCのうち13種類を活性化することに成功し、1つのポリケチド、1つのRiPP、3つのアルカロイド生成物の同定と特性解析につながった。
本研究は、ストレプトマイセスの遺伝子の発現を正確に制御し、その天然物を効率的に発掘するに有用ななツールキットを提供するに至った。
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