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[出典] "CRISPR screens and lectin microarrays identify high mannose N-glycan regulators" Tsui CK [..] Dillin A. Nat Commun. 2024-11-18. https://doi.org/10.1038/s41467-024-53225-1 [所属] HHMI (UC Berkeley), U Alberta

 糖鎖は細胞のシグナル伝達と機能において重要な役割を果たしている。タンパク質とは異なり、糖鎖構造は特定の遺伝子配列から直接的に転写・翻訳されるのではなく、多くの遺伝子の活性が協働されることで合成されるため、その機能と分子機序の解明が困難であった。

 米国にカナダが加わった研究チームが今回、CRISPRスクリーニングに、レクチンマイクロアレイ [PNAS, 2007]を介して得られる蓄積された天然単離されたレクチンとその結合特異性の知識を利用して、細胞表面のN-グリコシル化の制御因子を同定し、その特徴を明らかにした。具体的には、高マンノース糖鎖の制御因子を同定した。高マンノース糖鎖は、すべてのN型糖鎖の必須中間構造であり、自然免疫応答の重要な糖鎖エピトープである。
  • はじめに、細胞株A549にレンチウイルスでdox誘導性XBP1sシステムを導入し、高マンノースが誘導される実験プラットフォームを用意した [論文Fig. 1参照]
  • その上で、FACSおよび磁気ベースの細胞選別法を用いて、CRISPR-Cas9によるゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーニングとCRISPRi標的スクリーニングを行い、高マンノースN型糖鎖の細胞表面レベルを制御する遺伝子の拡大ネットワークを明らかにした。
  • 続いて、レクチンマイクロアレイを用いて糖鎖の変化を網羅的に測定し、選択的な制御因子がどのように細胞表面の糖鎖形成を制御しているのか、そのメカニズムに関する知見を得た。
  •  その結果、高マンノース糖鎖形成の2つの制御因子(TM9SF3遺伝子とCCC複合体)が、複合体N-グリコシル化とゴルジの形態および機能を制御していることが明らかになった。
  • 具体的には、TM9SF3の機能喪失は、シス-ゴルジ体とトランス-ゴルジ体ネットワーク(TGN)の共局在化を減少させ、複合型N-グリカンの形成を阻害すること、一方、CCC複合体の破壊は、ゴルジ体の断片化をもたらすが、シス-ゴルジ体とTGNの共局在化をある程度促進し、複合型N-グリカンの産生を促進することを見出した。
  • 特に、レクチンマイクロアレイを用いてゴルジ体の機能を偏りなく調べた結果、表面レベルでは類似しているゴルジ体の形態変化(すなわち断片化)が、糖鎖形成の結果を大きく異ならせることが明らかになった。
 今回得られた知見は、細胞表面の高マンノースN-グリコシル化制御因子を明らかにするものであり、また、CRISPRスクリーニングとレクチンマイクロアレイ技術を組み合わせることで、新規なグリコシル化制御因子を明らかにする戦略が、一般的に有効であることを示すのものである。

[図一覧]

[関連crisp_bio記事]
  • CRISPRメモ_2019/02/01_1 [第2項] 志賀毒素細胞死を介したゲノムワイドCRISPRスクリーンにより、糖脂質の調節因子としてLAPTM4AとTM9SFタンパク質を同定
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