2024-12-19 ネイチャー誌ニュース記事に準拠した追記(長文)
2024-11-27 サイエンス誌ニュース記事に準拠した初稿
[出典] NEWS "Open-access journal eLife to lose ‘impact factor’" Brainard J. Science. 2024-11-13 8:00 PM ET. https://doi.org/10.1126/science.adu7465
[ニュース] インパクトファクター (IF)を失ったジャーナル"eLife"が直面する試練
- 先駆的オープンアクセス・ジャーナルの大胆な出版モデルの改変によって、IFをめぐるIF側(クライベイト / Clarivate)と学術出版側との対立 [*] が先鋭化
[出典] NEWS "Pioneering journal eLife faces major test after loss of impact factor - The open-access title’s bold publishing model has bought long-bubbling conflicts to the fore" Kwon D. Nature 2024-12-18. https://doi.org/10.1038/d41586-024-04199-z
今回のクラリベイト社の決定により、一部の地域からのeLife への投稿(査読料1本あたり2,500米ドル)が、減少している。2012年に創刊されたeLife の初代編集長を務め、2019年に退任したUC Berkeleyの分子細胞生物学者であるRandy Schekmanは、eLife. 創刊時にIFが付されるのを避けようとしていたが、「ジャーナルの財政的な存続が非常に心配です。インチキな数字("phony number")の影響を受けずに進化することが許されていればよかったのですが......」と語る。
eLife 側は「IFを支持したことはないが、IFに大きく依存している研究機関の研究者にとっては、IFが付されなくなるのが問題になることは理解している」と述べている。eLife のTimothy Behrens共同編集長は、「ジャーナルがどうなるかを言うのは時期尚早だが、編集チームはコミュニティからのフィードバックを集め、投稿を注意深く見守っている」と言う。
eLife 出版モデルの改変とは、査読者と編集者が共同で論文を査読して出版の可否を決定し著者に通知するシステムから、「出版、査読、そしてキュレイト」と言うシステムへの変更を言う。Behrensによると、投稿者は新しいモデルを受け入れて、その透明性を評価し、投稿数は大きくは減少していない("... did not see a big drop in submissions")。UConn Healthの計算生物学者Sarvenaz Sarabipour氏は、eLife の以前のモデルで論文を発表し、両方のモデルで査読者を務めた経験があるが、「アクセプト - リジェクト・モデルの廃止について、元々、コミュニティによる論文評価がその決定で終わることがないことを、研究者は知っています。多くの人々、特にキャリアの浅い研究者は、最高の研究をeLife に送りたいと願っていると思います」と語った。
eLife への投稿動向が研究分野によって異なっていることを、Behrensは認めている。新モデルはプレプリント投稿が広がっている物理学や計算科学に近い計算神経科学でより受け入れられ、医学または細胞生物学では、旧モデルへの親和性が高い。
IFは、ジャーナルごとに付され、個々の論文に付されるわけではない。プレプリント・レポジトリbioRxiv とmedRxiv の共同設立者であり、Cold Spring Harbor Laoboratory PressのアシスタントディレクターであるRichard Severは言う「私たちが目にしているのは、対照的な2つの見解の対立である。論文はその論文だけで判断されるべきだという考えと、論文の質はその論文が所属するジャーナルで判断できるという考え、の2種類である」。
IFの影響力は、IFが広く使われている中国からの投稿が、2024年10月をピークとして11月には以後、120件超えから50件を下回るまで急減したことに、表れている。なお、米国や欧州を含む他の地域では緩やかな減少が見られる (米国は9月時点から低下が続いている)。
今後、「出版 - 査読 - キュレーション」モデルが研究社会に広がっていくか、興味深い。
[*]
"Beat it, impact factor! Publishing elite turns against controversial metric - Senior staff at leading journals want to end inappropriate use of the measure" Callaway E. Nature 2016-07-08. https://doi.org/10.1038/nature.2016.202242024-11-27 サイエンス誌ニュース記事に準拠した初稿
[出典] NEWS "Open-access journal eLife to lose ‘impact factor’" Brainard J. Science. 2024-11-13 8:00 PM ET. https://doi.org/10.1126/science.adu7465
Web of Scienceデータベースを運営しているClarivate (クライベイト)社が2024年11月13日に、表題の決定を発表した。この「eLife 誌のインパクトファクター発行中止」は、出版業界関係者の間では予想されていた。クラリベイトが10月に「eLife 誌による論文出版の可否が、査読による検証から切り離されている」ため、イーライフのモデルを見直す」と述べたからである。クラリベイト社は、eLife誌が2013年1月31日から採用し始めた新たな編集方針 [*]、すなわち、「編集者が不完全または不十分と判定した投稿も、eLifeのバナーの下に、“Reviewed Preprint”として掲載する(出版する)」を、今回、容認できないと判断したからである。なお、クラリベイト社は、同誌の編集者が 「solid 」以上と指定したeLife の論文については、引き続きIFを作成するとしている。しかし、IFが現時点では6.4と比較的高い [*]このジャーナルは、クラリベイト社が2025年6月に全ジャーナルを対象に更新したIFをリリースする時点で、ジャーナルとしてのIFを失うことになる。
[*] "eLife's New Model: One year on - Explore key milestones, achievements and finding from the first year of eLife's new model" eLife. 2024-02-29.
ジャーナルに付与されるIFについては、研究業績の評価のための指標として利用することは適切ではないとする議論が続いており、また、eLife誌によれば、新たな編集方針以後に、出版された論文のクオリティーは、それ以前のレベルと維持しているとのことであるが、2025年6月以後のeLife誌の状況が注目される。
eLife 誌のモデルは、エディターによる「アクセプト・リジェクト」の判断がないため、結局のところ、論文の本文と付随する査読に基づき、論文の良し悪しを評価するのは読者に委ねられる。しかし、eLife 誌を創刊した編集者であり、新方針に反対して編集委員を辞した2013年ノーベル生理学・医学賞の共同受賞者の一人であるRandy Schekmanはそれを「それは甘い(wishful thinking)」、「(ジャーナルの)編集者の判定は読者の助けになる」、「誰がそのコンテンツを読む時間があるのか?私たちは情報であふれかえっている」と言う。
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