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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Adaptation of bacterial natural single guide RNA (tracr-L) for efficient plant genome editing" Karmakar S [..] Baig MJ, Molla KA. Plant Cell Rep 2024-11-23. https://doi.org/10.1007/s00299-024-03371-z [所属] ICAR-National Rice Research Institute,  Ravenshaw U, ICAR- National Institute of Natural Fibre Engineering and Technology

 Streptococcus pyogenes のCRISPR-Cas(SpCas9)システムにはpre-crRNAと、CRISPRに基づく免疫を補助するもう一つのノンコーディングRNA(tracrRNA)として、長鎖RNA(tracr-L)と短鎖RNA(tracr-S)の2種類のtracrRNAが産生される。tracr-SはcrRNAの生合成とCas9の切断を制御し、tracr-LはCas9プロモーターを標的としてCRISPR-Casの発現を抑制し、自己免疫を防ぐ。tracr-Lから79ヌクレオチドを欠失させたΔtracr-Lは、遺伝子抑制において同様の機能を保持している。

 インドの研究チームは今回、植物(イネ, Oriza sativa)システム内でのゲノム編集におけるtracr-LおよびΔtracr-Lの有効性を初めて分析した。
  • 精製SpCas9と、SpCas9遺伝子、OsPDS、およびOsSWEET11プロモーターを標的とする合成sgRNAを用いたin vitro切断アッセイにより、すべての標的部位において、tracr-Sはtracr-LおよびΔtracr-Lと比較して最も高い切断効率を示すことを、見出した。
  • In vivoゲノム編集では、3つのイネ遺伝子 [*]を標的として、tracr-L、Δtracr-L、tracr-Sをイネ・プロトプラストにトランスフェクトし、評価した:[*] OsPDS、OsSPL14、およびOsSWEET14のプロモーター。アンプリコンディープシーケンスにより、3つのtracrRNAバージョン全てにおいて、標的領域における様々なタイプのインデルが明らかになり、編集効率は同程度であった。
 本研究により、真核生物のゲノム編集における長鎖tracrRNA(tracr-L)とその切断型変異体(Δtracr-L)の有効性が示され、これら2つの新しい形態のtracrRNAが、植物ゲノム編集アプリケーションや、より広範な真核生物に対するCRISPR-Casツールキットの可能性が広がった。
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