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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

- 残存するスパイクタンパク質はビオンテック/ファイザーのmRNAワクチンにより半減するが, 完全に除去されるには至らない
[出典] "Persistence of spike protein at the skull-meninges-brain axis may contribute to the neurological sequelae of COVID-19" Rong Z, Mai H, Ebert G [..] Ertürk A. Cell Host Microbe. 2024-11-26. https://doi.org/10.1016/j.chom.2024.11.007 [所属] Institute for Tissue Engineering and Regenerative Medicine (iTERM), Ludwig-Maximilians-University Munich, Technical University of Munich/Helmholtz Munich, University Medical Center Hamburg-Eppendorf, German Center for Neurodegenerative Diseases (DZNE) Munich, German Center for Diabetes Research, Institute for Diabetes and Obesity/Helmholtz Munich, Institute of Lung Health and Immunity/Helmholtz Munichなど;グラフィカルアブストラクト

 SARS-CoV-2感染は長期間持続する神経症状と関連しているが、その根本的なメカニズムは不明である。主としてミュンヘンを拠点とする研究チームは今回、組織の透明化(optical clearing)法であるSHANEL [*] と可視化(imaging)を用いて、ヒトCOVID-19患者の頭蓋骨-髄膜-脳軸にSARS-CoV-2スパイク蛋白が蓄積していることを観察した。さらに、ロングCOVID患者の脳脊髄液において神経変性のバイオマーカーが上昇し、ヒトの頭蓋骨、髄膜、脳のサンプルのプロテオームにおいて、炎症経路の調節異常と神経変性に関連した変化が見出された。
[*] "Cellular and Molecular Probing of Intact Human Organs" Zhao S [..] Ertürk A. Cell 2020-02-20. https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.01.030; SHANEL (small-micelle-mediated human organ efficient clearing and labeling)

 SARS-CoV-2感染マウスでもスパイクタンパク質の同様の分布パターンが観察された。脳卒中および外傷性脳損傷モデルマウスでは、スパイクタンパク質の注射のみで、神経炎症、頭蓋-髄膜-脳軸のプロテオームの変化、不安様行動、転帰の悪化を誘導するのに十分なことが、観察された。

 SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種は、マウス感染後のスパイクタンパク質の蓄積を減少させたが、除去するには至らなかった。

 今回得られた知見は、脳境界部に残留しているスパイクタンパク質がCOVID-19の永続的な神経学的後遺症に寄与している可能性を示唆している。
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