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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[出典] "Ultrasound Control of Genomic Regulatory Toolboxes for Cancer Immunotherapy" Wu Y, Huang Z, Liu Y, He P [..] Liu L, Wang Y. Nat Commun. 2024-12-01. https://doi.org/10.1038/s41467-024-54477-7 [所属] UCSD, UCLA, The Wallace H. Coulter Department of Biomedical Engineering, Peking U, Peking U Health Science Center, Shenzhen Bay Laboratory
[crisp_bio記事] 今回紹介論文は、bioRxiv 投稿に準拠した2023年7月7日付crispsp_bio記事の「集束超音波 (focused ultrasound: FUS) によるCRISPRa/CRISPRiの時空間制御を実現」に対して、その査読済みバージョンに準拠した詳細版に相当する。

 CRISPRベースの技術がトランスレーショナル・アプリケーションや臨床試験へと進むにつれて、安全性/制御性が主要な懸念事項の一つとなっている。これは主に、Cas9関連タンパク質の免疫原性や、細胞内で長期間発現する間に蓄積されるオフターゲット効果に起因する。この課題に対して、米中の研究チームが今回、低分子、光、近赤外光 (NIR)による熱などによる制御に替えて、集束超音波(focused ultrasound: FUS)によるCRISPRベース技術の制御が有効なことを、報告した。

 FUSは、光やNIRは到達不可能な生体内の数十センチメートルの深さまで浸透し、生体組織に局所的な温熱を直接誘導することができる。FUSは、比較的高温(60℃以上)で患者の組織切除に使用され、また熱ショック蛋白質プロモーター(Hsp)のような熱感受性プロモーターを用いて、軽度な高温(42~43℃)でin vivoでの導入遺伝子発現を制御するために使用されてきた。

 研究チームは以前、FUS誘導性CAR (FUS-CAR)-T細胞を開発し、そのFUSによる活性化を介して、腫瘍外毒性を軽減したがん治療が可能なことを実証していた [Nat Biotechnol, 2021]。そこで、浸透力と精密な時空間制御の能力を備えたFUSによって、特定の組織や臓器におけるゲノム編集や制御を、補助的な因子を必要とせずにCRISPR技術で直接制御することが可能である想定した。

 実際、最近の研究では、Cas9含有ナノ複合体を介した腫瘍細胞のFUS制御可能なゲノム編集が報告されている [Nat Nanotechnol, 2023]。しかし、ナノ複合体の半減期が短く、送達効率が限られている(主に肝臓)ため、より広範な臨床応用には限界があった。最近行われた別の概念実証研究でも、FUSによる遺伝子活性化と塩基編集が実証されたが、エピゲノムの直接制御とがん治療への応用の可能性は、まだ十分に実現されていない [crisp_bio 2023-10-31]

 研究チームは今回、FUS-inducible CRISPRa (FUS-CRISPRa)、FUS-inducible CRISPR epigenetic editor (FUS-CRISPRee)、FUS-inducible CRISPR (FUS-CRISPR)を含む、ソノジェネティクス(sonogenetics)に基づく CRISPRツールのセット、FUS-CRISPR(a/ee)ツールボックス、を構築した。その上で、具体的に、複数の細胞型およびin vivoにおいてFUS制御可能なゲノムおよびエピゲノムのリプログラミングが可能となり、相乗的がん免疫療法への応用が期待できることを示した。

 相乗的がん免疫療法については、まず、今回in vitroで実証したFUS-CRISPRを介したテロメア破壊が、CAR-T細胞治療に向けた固形腫瘍のプライミングになることが確認された。次いで、AAVを用いて生体内にFUS-CRISPRを導入して腫瘍細胞をリプログラムし、synNotch [*] CAR-T細胞を活性化して、隣接する腫瘍細胞を駆除するための普遍的腫瘍抗原に対するCARを産生する「トレーニングセンター」として機能させ、がん細胞集団全体を攻撃した。これらの相乗戦略は、比較的抵抗性のある腫瘍に対するCAR-T療法の有効性を高めた [論文Fig. 6参照]

[*] synNotch関連crisp_bio記事
[図一覧]
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