[出典]
論文 "Precision genome editing using combinatorial viral vector delivery of CRISPR-Cas9 nucleases and donor DNA constructs" Li Z [..] Gonçalves MAFV. Nucleic Acids Res 2024-12-09. https://doi.org/10.1093/nar/gkae1213 [所属] Leiden U Medical Center.
著者らの先行論文 "Large-scale genome editing based on high-capacity adenovectors and CRISPR-Cas9 nucleases rescues full-length dystrophin synthesis in DMD muscle cells" Tasca F [..] Gonçalves MAFV. Nucleic Acids Res 2022-07-01. https://doi.org/10.1093/nar/gkac567;crisp_bio 2022-07-18大容量アデノベクターとCRISPR-Cas9ヌクレアーゼを介して,DMD筋細胞への全長ジストロン遺伝子の導入と発現を実現
遺伝子ターゲティングは通常、RNAにガイドされるプログラム可能なヌクレアーゼが生成する部位特異的DNA二本鎖切断(DSB)に、相同性指向性修復(HDR)または非相同性末端接合(NHEJ)のためのドナーDNA基質を送達することによって達成される。前者の経路は、それぞれに適したドナーDNAコンストラクトを組み合わせることで、相同組換え(HR)、マクロホモロジー媒介末端接合(MMEJ)、最近では相同性介在末端接合(homology-mediated end joining: HMEJ)[*] を介して実現される。HDR、MMEJ、およびHMEJのドナーは、標的となるDSBの両側のゲノム配列と相同な配列(相同性アーム)を伴うが、NHEJに組み合わされるドナーは「相同性アーム」を全く持たない。相同アームを伴うドナーは、相同性非依存標的化統合(homology-independent targeted integration: HITI)法を含むNHEJドナーとは対照的に、方向性のあるシングルステップ遺伝子ノックインを達成する。
さらに、HRドナーとは対照的に、NHEJ、MMEJおよびHMEJドナーは、その挿入領域の左右にプログラム可能なヌクレアーゼによる切断部位が設定される。この 「ダブルカット 」デザインは、ドナーDNA基質がそのデリバリー担体(delivery vehicle)のバックボーンから遊離することを保証し、ドナーとターゲット配列間のプロセッシングとアラインメントを介した遺伝子ノックインに有利である。MMEJおよびNHEJドナーと比較すると、HRおよびHMEJドナーは、染色体-組換えDNA接合部におけるインデルを緩和し、より正確で方向性のある遺伝子ノックインをもたらす。
遺伝子ターゲッティングのツールの送達法には、エレクトロポレーションやポリカチオンをベースとする物理的や化学的手法がありそれぞれに一長一短あるが、それられに対して、ウイルスベクターによる送達は再現性が高く、さまざまな細胞種に簡単に適用できる利点がある。
これらの特徴は、ベクターの親ウイルスが、その核酸ゲノムを宿主細胞核に送達するために進化させた、絶妙に微調整されたメカニズムに由来する。その中でアデノウイルス(AdV)およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、細胞周期の状態とは無関係に、多種多様な哺乳類細胞において特に効果的な送達手段である。
- AdVは、直鎖のタンパク質でキャップされた二本鎖DNAゲノム(最大容量36kb)を持ち、一方で、AAVは、T字型のヘアピン逆末端反復(ITR)を持つ直鎖の一本鎖DNAゲノム(最大容量4.7kb)を持つ。
- これまでの実験から、フリーエンドの直鎖DNAとは対照的に、AdVゲノムを含むキャップされた二本鎖DNA分子は、コンカテマー形成や標的外の染色体挿入に抵抗性であることが証明されている。興味のある編集やプログラム可能なヌクレアーゼをコードする構築物の中でも、後者の染色体統合を避けることは、オフターゲット編集を最小化するために特に重要である。さらに、AAVとは異なり、AdVはCas9と単一または複数のgRNAをコードする完全なCRISPR-Cas9コンストラクトをパッケージ化することができる。
- 一方で、組換えAAVゲノムは、トランスフェクトが困難な幹細胞や、in vitroおよびin vivoでのNHEJを介したHITIを含め、HRの十分な基質として機能する。一本鎖DNAを挟む二次構造のITRを特徴とするAAVベクターゲノムの特異的な構造が、それに寄与していると考えられる。
オランダの研究チームは今回、これらのウイルスベクタープラットフォームの相補的な特性に注目し、AdVとAAVシステムをそれぞれ、CRISPR-Cas9ヌクレアーゼと、異なるタイプのドナーDNAテンプレートの導入に割り当てるアプローチを探究した。特に、第二世代および第三世代のAdVをCas9ヌクレアーゼの担体に、AAVを一本鎖または二本鎖DNA分子として提示されるHRおよびHMEJドナー基質の担体に、選択した。さらに、ゲノム編集の効率と精度におけるAAVドナーDNA構造の役割を理解するために、
標準に加えて自己相補型(sc)AAVベクターを利用して、それぞれ一本鎖および二本鎖DNA形式で標的細胞核内にドナーDNAを送達した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
標準に加えて自己相補型(sc)AAVベクターを利用して、それぞれ一本鎖および二本鎖DNA形式で標的細胞核内にドナーDNAを送達した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。 ところで、AAVと同様に、第三世代AdV(以下、高容量AdV粒子(AdVP))は、非エンベロープ型タンパク質キャプシドにパッケージされた、ウイルス遺伝子を含まない組換えDNAから構成されている [Tasca et al., 2020;Ricobaraza et al., 2020]。高容量AdVPとは対照的に、第一世代および第二世代のAdVは、限られた数のコード領域、例えば、初期(E)領域1(E1)単独、またはE2AやE4とともにのみを欠いている。これらのウイルス遺伝子を含むAdVベクターの遺伝子型は、さらに、相補性細胞株でのベクター増幅時にその機能を必要としない免疫調節E3配列の欠失を有することがある。CRISPR-Cas9複合体をコードする初期世代のAdVと、HRまたはHMEJ用に調整されたAAVドナーを用いた共導入実験では、標的細胞における「リーキー」なAdV遺伝子発現に関連すると思われる厳密な用量依存性細胞毒性のため、限られた遺伝子ターゲティングしか得られなかった。ウイルス遺伝子を完全に欠失させたAdVPと前述のAAVドナーを用いた共導入実験では、顕著な細胞毒性を伴わない強固な遺伝子ターゲティング(効率93%)が得られた。特に、HRドナーの一本鎖AAV導入と、最適化された高忠実度CRISPR-Cas9ヌクレアーゼ (high-fidelity eCas)のAdVP導入を組み合わせることで、ヒト細胞における強固で正確な遺伝子ターゲティングが得られた。さらに、生産性の高いAAVベクター導入は、プログラム可能なヌクレアーゼによって誘導されるDSBsの頻度と直接相関しており、これはAAVベースのゲノム編集手順の最終的な性能と精度に関係している可能性があることが明らかになった。最後に、ヒト細胞における欠陥AAV DNA種の標的外染色体挿入を回避するために、通常のCas9ヌクレアーゼの代わりに高忠実度ヌクレアーゼを選択することの重要性が示された。
[*]
HR, NHEJおよびHMEJの比較模式図右下図参照 Cell Research (2017)論文のFigure 1から右図に引用- HMEJ関連crisp_bio記事:2021-02-18; 2021-04-20;2023-12-22; 2023-03-27
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