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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Wingless strain created using binary transgenic CRISPR/Cas9 alleviates concerns about mass rearing of Hermetia illucens " Kou Z [..] Huang Y. Commun Biol. 2024-12-19. https://doi.org/10.1038/s42003-024-07254-7 [所属] Shanghai Jiao Tong U, Shanghai Institute of Plant Physiology and Ecology CAS, U CAS, Texas A&M U.

 ブラックソルジャーフライ(BSF)の幼虫Hermetia illucens は、天然の廃棄物リサイクル剤として、また、タンパク質が豊富な飼料として利用できる可能性を秘めている。こうした昆虫の養殖プロセスに関する危惧の一つが、大規模な個体群からの昆虫の大量脱出である。中国を主とする研究チームは今回、この問題に対処できる可能性を秘めた、無翅系統を作出するためのバイナリー・トランスジェニック [*] CRISPR/Cas9システムを開発した。
[*] Cas9を発現させた成体とsgRNAを発現させたsgRNAの成体を交配する手法

 研究チームは生殖腺特異的プロモーターをin vivoで同定し、2つの最強プロモーターであるnanos exuperantia によるCas9発現を評価した。Hiexu-Cas9をトランスジェニックsgRNA発現昆虫と交配させると、マーカー遺伝子white のノックアウト効率が高くなることを見出した。Hiexu-Cas9株は、Cas9の母方への沈着を示し、雌のCas9発現個体の子孫において、より効果的なノックアウトを引き起こした。

 このバイナリー・トランスジェニックCRISPR/Cas9の手法を用いて、交尾能力を欠く無翅型変異体を作出し、2つの単一系統の遺伝的交配によってコロニーを維持することに成功した。これらの昆虫は逃亡する可能性が低く、もし逃亡したとしても交尾を成功させることはできないだろう。

 本研究は、BSFの遺伝子機能研究や産業応用に利用可能な効果的な遺伝学的ツールを検証するとともに、BSFの大量飼育に対する懸念を軽減するアプローチを提供するものである。
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