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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] Acrs (Anti-CRISPR proteins / 抗CRISPRタンパク質)
[出典] "Anti-CRISPR proteins in Gluconobacter oxydans inactivate FnCas12a by acetylation" Wang X [..] Zhou J. Int J Biol Macromol. 2025-01-08. https://doi.org/10.1016/j.ijbiomac.2024.139256 [所属] Jiangnan U.

 グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)は、ビタミンCの一段階生産に重要なプラットフォームである。これまでの研究で、G. oxydans ではCRISPR/Cas12aが自然に不活性化されることが報告されているが、具体的なメカニズムは不明である。

 江南大学の研究チームによって今回、報告されているCas12aアンタゴニストを参照タンパク質として用いて、同じアセチルトランスフェラーゼ機能に基づき、G. oxydans において3つの新規Acr(AcrVA6、AcrVA7、AcrVA8)が同定された。生化学的および構造解析から、AcrVA6とAcrVA8は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を認識するFnCas12aの重要な残基Lys681とLys823をアセチル化することにより、Cas12aと標的DNA分子との結合を阻害することが示された。AcrVA7はLys589をアセチル化することで、FnCas12aとcrRNAの複合体形成を阻害した。

 量子力学的(QM)計算により、AcrVA6は、ドナーのアセチル基がまずAcrVA6のSer37とアセチル-酵素中間体を形成し、次にFnCas12aのLys671に転移するという、まれなピンポン転移機構によってアセチル化されることが明らかになった。

 最後に、光制御バリアントAcrVA6とHDAC11からなる系は、光誘導性アセチル化と脱アセチル化を通して光スイッチとして機能し、FnCas12aの時空間特異的制御に利用可能なことを実証した。

 本研究では、参照Acrsと類似の酵素機能に基づいてAcrsを初めてスクリーニングし、AcrVA5と類似のアセチルトランスフェラーゼ活性を有する3つの新規Acrsを同定した。さらに、可逆的なアセチル化に基づき、同じ部位を修飾するアセチルトランスフェラーゼや脱アセチル化酵素を用いた効果的な酵素機能制御ツールが開発された。

 これにより、V型Acrsのライブラリーが広がり、Cas12aのアセチル化不活性化の異なるメカニズムが明らかになっただけでなく、アセチル化タンパク質に適した酵素機能制御ツールの開発に普遍的なアイデアが提供された。

[注] これまでに報告されてきたCas12aを標的とするAcrs

 Cas12a依存的にgRNAを切断するAcrVA1、遊離Cas12aと結合することで阻害作用を発揮するAcrVA2、crRNA-DNAヘテロ二重鎖の形成を阻害するAcrVA4、Cas12aのアセチル化によって二本鎖DNA(dsDNA)の認識を阻害するAcrVA5など。
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