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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] KI(ノックイン); GD2は、ヒトの神経芽細胞腫や黒色腫を含む神経外胚葉由来の腫瘍に発現するジシアロガングリオシド (disialoganglioside) であり、ヒトでは主に小脳や末梢神経など、正常組織での発現は非常に限られている [Wikipedia]。
[出典] "Virus-free CRISPR knock-in of a chimeric antigen receptor into KLRC1 generates potent GD2-specific natural killer cells" Shankar K [..] Saha K.  (bioRxiv 2024-02-24) Mol Ther 2025-01-14. https://doi.org/10.1016/j.ymthe.2025.01.024 [所属] U Wisconsin-Madison, U Wisconsin School of Medicine and Public Health, St Jude Children's Research Hospital;グラフィカルアブストラクト参照

 ナチュラルキラー(NK)細胞は、その細胞傷害性プロファイルから、既製の(off-the-shelf)同種細胞療法として魅力的である。しかしながら、固形癌に対するNK細胞の活性は、腫瘍微小環境内でHLA-EなどのNK阻害リガンドがアップレギュレーションされることもあり、依然として最適とは言えない。ウィスコンシン大学マディソン校を主とする研究チームは今回、CRISPR-Cas9 RNPを利用して、ヒト末梢血から単離したNK細胞において、HLA-E結合NKG2AレセプターをコードするKLRC1 遺伝子をノックアウトし、GD2を標的とするキメラ抗原レセプター(CAR)を非ウイルス的に送達した。

 CRISPR/Cas9 RNPによるゲノム編集の結果、オフターゲット活性を最小限に抑えながら、98%のノックアウト効率と23%という高いGD2 CAR導入遺伝子の特異的KIで、KLRC1 遺伝子の効率的なゲノム破壊をもたらすことが、CHANGE-Seq、in-out PCR、アンプリコンシークエンシング、ロングリード全ゲノムシークエンシングによって確認された。

 KLRC1-GD2 CAR NK細胞は、GD2+ヒト腫瘍細胞に対する正確な細胞標的性と効力だけでなく、高い生存率と増殖を示した。KLRC1-GD2 CAR NK細胞は特に、HLA-Eを発現するGD2+メラノーマ細胞に対して、in vitroでHLA-Eに基づく阻害を克服した。

 本研究は、シングルステップのウイルスフリーゲノム編集を介して、CARを発現させながらCRISPR/Cas9を介してNK細胞内の阻害性シグナル伝達を正確に破壊することで、HLA-EGD2+固形腫瘍に対する強力な同種細胞療法を実現できる可能性を示した。

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