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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Novel adaptive immune systems in pristine Antarctic soils" Van Goethem MW [..] Makhalanyane TP. Sci Rep. 2025-01-18. https://doi.org/10.1038/s41598-024-83942-y
 [著者所属(記事文末)]

 南極環境は、氷点下、高い紫外線照射レベル、極度な低湿度、極度な栄養不足といったポリ・エキストリーム (ply-extreme) 環境であり、そうした環境に生息しているウイルスや微生物は他には見られない独特な特性を帯びていると考えられる。南アフリカ、サウジアラビア、ニュージーランド、英国、米国、中国、ベルギー、スペインの国際研究チームは今回、Antarctic soil 6メタゲノムからゲノムを再構成するアプローチである"genome-resolved metagenomics(以下、GRM)" [*]を用いて、ヒトがこれまで殆ど関与していなかった自然のままの南極の土壌から採取したメタゲノムを使って、ウイルス (ファージ) と細菌 (宿主) の多様性を評価した [サンプル採取サイトとデータ解析フローについてFig. 6引用右図参照]
[*] "Genome-resolved metagenomics: a game changer for microbiome medicine" Kim N, Ma J, Kim W, Kim H¥J, Belenky P, Lee I.  Exp Mol Med. 2024-07-01. 
  • 広範なファージ-宿主相互作用、潜在的な新規ウイルス多様性、CRISPR-Casバリアントの存在が示唆された。ファージ・シグネチャー(phage signatures; viral OTU (vOTU)) は、バクテロイデス門 (Bacteroidota ) やアキドバクテリウム門 (Acidobacteriota )のメンバーを含む、これらの表層土壌の優勢な土壌細菌系統の感染に関連しており、一方、ウェルコミクロビウム門 (Verrucomicrobiota )やバクテロイデス門のMAG (metagenome-assembled genomes) に組み込まれたプロファージは、現代の感染についてさらなる洞察を与えた。
  • プロファージが広く存在することは、南極土壌における溶原性感染戦略の重要性を示唆している。
  • 細菌の適応免疫系の一部であるCRISPR-Casシステムは、解析された18のMAGsのうち4つに共通しており、バクテロイデス門とアキドバクテリウム門の双方における適応免疫系を示している。
  • さらに、クラスIのCRISPR-Casアレイ(タイプI-B、I-C、I-E)がメタゲノムから検出され、4つのCRISPR-Casアレイが既存のアーキテクチャーと一致しなかったことから、新規バリアントである可能性が示唆された。
  • CRISPR-Casアレイで観察された構造の違いは、細菌がウイルスの捕食や吸着に抵抗する能力を高めている可能性を示唆した。これは、南極の極限環境が、ウイルスに異なる感染戦略をとらせ、CRISPR-Casシステムの多様性と汎用性を拡大させた結果とも考えられる [*1]
  • CRISPR-Casコンティグ全体のG+C含量とGCスキューの解析から、CRISPR-CasアレイではG+Cスキューのばらつきが少ないが、プロファージではばらつきが大きいことが示された。このことは、これらの適応免疫マーカーが古いものであるのに対し、プロウイルス要素は最近の外来DNA移入の結果であることを示唆している。
  • Antarctic soil 5前項の知見は、TnpBトランスポザーゼと顕著な配列相同性を持つ、南極特有の新規cas12様エフェクターの記述によってさらに証明され、TnpBがCRISPR-Casシステムに採用されたCas12ヌクレアーゼの祖先である可能性を示唆した [*2]  [Fig. 5引用右図参照; AlphaFold2を利用した構造比較を含む]

 [著者所属] U Pretoria (South Africa), iThemba LABS (South Africa), Stellenbosch U (South Africa), KAUST (Saudi Arabia), Scotland’s Rural College,  Heriot-Watt U (UK), U Waikato (New Zealand), Molecular EcoSystems Biology Division (Lawrence Berkeley National Laboratory), Institute of Tibetan Plateau Research CAS, Ghent U (Belgium), Center for Plant Systems Biology (Belgium), Instituto de Recursos Naturales y Agrobiología de Sevilla (Spain), U Pablo de Olavide (Spain)

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