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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典]
  • NEWS "Microplastics block blood flow in the brain, mice study reveals - Real-time imaging shows how plastic-stuffed cells form clumps that affect mouse movement" Mallapty S. Nature 2025-01-23. https://doi.org/10.1038/d41586-025-00178-0
  • 論文 "Microplastics in the bloodstream can induce cerebral thrombosis by causing cell obstruction and lead to neurobehavioral abnormalities" Huang H, Hou J, Li M, Wei F, Liao Y, Xi B. Sci Adv. 2025-01-24. https://doi.org/10.1126/sciadv.adr8243 [所属] State Key Laboratory of Environment Criteria and Risk Assessment (Beijing), Institute of Molecular Medicine (Peking U), PKU-Nanjing Institute of Translational Medicine, Dept Pharmacology and Cancer Biology (Duke University), National U Singapore.
 環境中の微小なプラスチック(microplastics: MPs)マイクロプラスチックによって、人間の健康が脅かされている。MPはヒトの血流や複数の組織で検出され、臓器の通常の生理学的プロセスを破壊している。ナノスケールのプラスチックは血液脳関門を突破し、神経毒性を引き起こす可能性があるが、MPsがどのようにして脳の機能異常を引き起こすのかは、まだ不明である。

 中国・米国・シンガポールの研究チームが今回、小型二光子顕微鏡と呼ばれる蛍光イメージング技術を使い、マウスの頭蓋骨に手術で埋め込んだ透明な窓を通して、マウス生体内の脳内でのマイクロプラスチックの動態の観察を実現した。
  • マウスに、電化製品や包装材、さらには玩具にも使われているポリスチレンの蛍光球を混ぜた水を与えたところ、約3時間後、蛍光を発する細胞が出現した。さらに解析を進めたところ、好中球や貪食細胞として知られる免疫細胞が明るいプラスチックの塊を摂取したことが示唆された。これらの細胞の一部は、脳の大脳皮質に存在する毛細血管の狭いカーブに引っかかり、時折、積み重なったと見られた。
  • この血管内の障害物は、その一部はやがて消失したが、4週間の観察期間中残っていた。
  • スクリーンショット 2025-01-24 13.04.01プラスチック球をマウスに静脈注射した場合は、数分で蛍光を発する細胞が観察され、サイズ小さいほど生成される血管内障害物は少なかった[Fig. 6引用右図参照]
  • 血管内障害物による血管の閉塞は、マウスに血流低下と神経学的異常を引き起こし、この影響は数日間続いた。
  • 筆頭著者のHaipeng Huangによると、未発表ではあるが、マウスの心臓や肝臓でも同様の障害物が形成されることが確認されている。
 他の研究チームもマイクロプラスチックの脳への蓄積を報告している。プレプリントサーバであるResearch Squareに掲載された投稿 [Campen et al., 2024] では、提供された遺体からの脳組織、特に血管壁と免疫細胞に、風化した小さなプラスチック片が高濃度で存在したことが報告されている。

 本研究において、MPsは組織に直接浸透するのではなく、局所的な血液循環を阻害することによって、間接的に組織機能を破壊することが示唆された。

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