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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "CRISPR-Cas9-based one-step multiplexed genome editing through optimizing guide RNA processing strategies in Pichia pastoris" Chen K, Maimaitirexiati G [..] Wang B, Yu T, Guo S.  Synth Syst Biotechno. 2025-01-23. https://doi.org/10.1016/j.synbio.2025.01.005 

 重要な従属栄養酵母であるPichia pastoris は、様々な異種組換えタンパク質の生産に利用されており、メタノールを基質とする付加価値化合物の生産に利用できる大きな可能性を秘めている。しかし、簡便で効率的なゲノム工学ツールの欠如が、特に複雑で多段階の代謝工学シナリオにおいて、P. pastoris のさらなる応用を妨げてきた。中国の研究チームは今回、ハンマーヘッド (HH) 型リボザイムやゲノム性肝炎デルタウイル (HDV)リボザイムでsgRNAを修飾することでガイドRNAプロセッシング戦略を最適化することにより、CRISPR/Cas9に基づく迅速かつ簡便なマルチ遺伝子編集システムを開発した。

 RNA Pol IIによって促進されるP. pastorisにおいて、tRNA-sgRNA-tRNA(tgt)アレイ、HH-sgRNA-HDV(HgH)構造、およびそれらの組み合わせを含む3つの異なるsgRNAプロセッシングカセットを構築し、それぞれ単一/二重遺伝子欠失、二重遺伝子座破壊、および統合の観点から遺伝子破壊効率を比較した。その結果、単一遺伝子ノックアウト、二重遺伝子ノックアウトのいずれにおいてもHgH構造が最も効率が高いことが示された。

 さらに、本システムを遊離脂肪酸(FFAs)と5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)の一段階生合成に応用することに成功し、標的改変株の構築に要する時間を大幅に短縮し、全体的な効率を向上させた。本システムは、将来的にP. pastoris における代謝工学を促進できると考えてられる。

[*] 著者所属:Shenzhen Institutes of Advanced Technology CAS (Center for Synthetic Biochemistry, Center for Materials Synthetic Biology), U CAS,  Shenzhen Campus of Sun Yat-sen U
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