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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 酵素工学は、エネルギー、材料、バイオテクノロジー、医療などの分野における課題解決に貢献してきた。しかし、目的とする機能を発揮する酵素を設計するために必要な配列と機能の関係に関する大規模なデータセットを迅速に生成・利用することには限界があった。たとえば、天然の酵素に対して数万ものバリアントを生成・評価することは、現実的ではなかった。

 ノースウエスタン大学のAshty S. KarimとMichael C. Jewettが率いる研究チームは今回、無細胞系でのDNAアセンブリーと遺伝子発現、および機能アッセイを統合し、かつ、機械学習(ML)モデルで誘導されるプラットフォームを開発し、タンパク質配列空間全体のフィットネスランドスケープを迅速にマッピングし、複数の異なる化学反応に対して酵素を最適化する「ML誘導型無細胞フレームワーク」を開発・実証した。

 一方で、炭素原子と窒素原子の間に形成される化学結合の一種であるアミド結合は、タンパク質、医薬品、合成物質、農薬、香料、フレーバーなどの日常製品を含む多くの天然物質や合成物質の基本的な構成要素である。

 研究チームは「ML誘導型無細胞フレームワーク」を、Marinactinospora thermotolerans 由来のMcbAと呼ばれるアミド合成酵素の設計に応用し、10,953種類の反応における1,217種類のバリアンの基質嗜好性を評価した。これらのデータを用いて、9種類の低分子医薬品を製造できるバリアントを予測するための拡張リッジ回帰 (augumented ridge regression) MLモデルを構築した。

 これらの9つの化合物において、MLによって予測された酵素バリアントは、親に対して1.6倍から42倍の活性の向上を示した。

 タンパク質の配列空間を反復的に探索し、特殊な生体触媒を並行して迅速に構築することを可能にした「ML誘導型無細胞フレームワーク」は、より大量のデータを獲得していくことで、酵素工学を加速することが、期待される。

[出典] "Accelerated enzyme engineering by machine-learning guided cell-free expression" Landwehr GM [..] Karim AS, Jewett MC. Nat Commun. 2025-01-20.https://doi.org/10.1038/s41467-024-55399-0 [著者所属]  Northwestern U (Dept Chemical and Biological Engineering, Center for Synthetic Biology), Stanford U (兼任);参考図 論文 Fig. 1: An ML-guided, cell-free enzyme engineering platform.
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