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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] NEWS "Four lessons COVID taught us about the immune system" Ledford H. Nature 2025-01-27. https://doi.org/10.1038/d41586-025-00128-w

1. SARS-CoV-2に対する免疫応答は, 抗体だけでなくT細胞に大きく依存する

 SARS-CoV-2に対する抗体はワクチン接種後数ヵ月で減少したが、ワクチン接種を受けた人々はウイルスを認識するT細胞を作り続けていた。このT細胞による防御は、第一世代のCOVIDワクチンによって上昇した抗体防御をかわしたウイルス変異体に対しても、依然として強力であった。

2. 抗体やT細胞による獲得免疫応答は, 鼻と肺とで異なる

 鼻の湿った粘膜は、血液中とは異なる抗体や免疫細胞を含むユニークな免疫環境である。このため、COVID-19ワクチンは肺へのウイルス浸潤によって起こる重症化に対して有効であったが、初感染に対しては中程度の防御効果しかなかった。鼻に特化した免疫反応を誘発するワクチンを組み合わせることが、考えられる。

3. 自然免疫応答は、ウイルスに対して抗体やT細胞ほど特異的でないが, 感染部位だけでなく, 全身に広がる特徴がある

 ウイルス防御に関わる多くの遺伝子を含む数百の遺伝子を活性化するインターフェロン反応が、ウイウルスが感染した細胞から遠い臓器においても見られた。

4. ウイルス感染が後遺症を伴うことが明らかになったが, それが起こる機構と治療法は判然としない

 COVIDパンデミックの結果, ウイルス感染が後遺症を伴うことが可視化され、ウイルス感染によって免疫系が体内のタンパク質に対する抗体を産生すること、SARS-CoV-2が感染後数ヵ月から数年間体内に潜伏すること、ウイルス感染後の病気がエプスタイン・バーウイルスなど体内の他の休眠ウイルスの再活性化を引き起こすことなどについて学んだが、治療法はまだ手探りの状態っである。

 スクリーンショット 2025-01-28 7.56.03ロングCOVIDに対する治療法は、COVIDのパンデミック後に答えの出ていない多くの謎の一つに過ぎない。サンディエゴにあるLa Jolla Institute for Immunologyの免疫学者Shane Crottyは「新型コロナウイルスは未だ身の回りに存在 [*]、無視して済むものではなく、学ぶべき点が多い」と言う。

[*] 日本の感染者数は、2025年1月26日の時点で38,000人余りと推計されている [https://moderna-epi-report.jpからキャプチャした右図参照]。
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