crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[注] iPB-RNP (in planta bombardment-ribonucleoprotein) [ 本投稿末尾のcrisp_bio関連記事参照]

 ダイズ [Glycine max (L.) Merril]に含まれるトリテルペノイドサポニンであるサポニン(soyasaponins)は、大豆食品の後味の渋みの原因であり、ダイズ種子から完全に除去することは、食味を 改善した品種を開発する上で重要な課題である。β-アミリン合成酵素遺伝子(GmBAS1 およびGmBAS2 )の機能喪失は、ダイズ種子中のサポニン含量を減少させるのに有効であることが証明されているが、これらの遺伝子の具体的な機能的役割は不明なままである。日本の研究チームが今回、外来DNAフリーな植物遺伝子編集法であるiPB-RNP法による機能解析を試みた。
  • 相同な2つのGmBAS 遺伝子の共通配列を標的とする単一のRNP(すなわち、単一のガイドRNAとCas9のRNP)を、ダイズ胚軸のシュート頂端分裂組織にボンバードメントにより導入した。
  • CAPS(cleaved amplified polymorphic sequences)解析の結果、1,467株のうち138株にGmBAS 遺伝子座の一方または両方に変異が認められた。
  • 続いて、後継世代におけるCAPSおよび塩基配列解析により、1塩基から10塩基までの遺伝性変異を持つ植物が合計16個同定された。
  • 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により、GmBAS1 遺伝子座の部位特異的変異導入により、成熟種子および若い根、茎、葉にサポニンが存在しないことが示された。
 これらの結果は、GmBAS1 がダイズにおいて優勢なβ-アミリン合成酵素遺伝子であることを示している。さらに、DNA フリーの CRISPR/Cas9 システムは、単一の gRNA を用いて、2 つの標的遺伝子座で同時に突然変異を誘発するのに非常に効率的であることが示された。

 iPB-RNPシステムでは、Cas9とsgRNAをRNPとして植物に直接送達することで、変異体を得るための再生が不要になり、また、RNPが急速に分解される特徴が生かされて、標的外変異のリスクが減少し、外来DNAを除去するための遺伝子分離も不要になる。

[出典] "Simultaneous site-directed mutagenesis for soybean ß-amyrin synthase genes via DNA-free CRISPR/Cas9 system using a single gRNA" Asa H [..] Yamada T. Plant Cell Rep. 2025-01-28. https://doi.org/10.1007/s00299-025-03433-w [所属] 北大, 兼松株式会社

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