crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 CRISPR遺伝子編集は、遺伝性疾患に対処するための画期的な技術であるが、デリバリー上の制約から、その治療応用は肝臓を標的とした生体外治療に限られている。Mammoth Biosciencesの研究チームは今回、肝臓をターゲットとするCRISPR遺伝子編集を生体内の広範な組織へと適用可能とする超小型なCRISPRヌクレアーゼ"NanoCas"をプレプリントサーバbioRxivから公開した。
  • NanoCasのサイズは425 aaと、Cas9やCas12aなどの遺伝子編集に広く利用されてきたCRISPRヌクレアーゼの約3分の1のサイズ [crisp_bio記事参照] である。
  • NanoCas9は、メタゲノムデータから見いだされた176種類の超小型CRISPR系を実験的にスクリーニングして発見し、さらに、タンパク質工学により最適化された。
  • 最適化NanoCas9は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで投与した場合、生体内の様々な細胞系や組織で強力な編集能力を発揮する。
 概念実証実験では、コレステロール制御に関与する遺伝子であるPcsk9をターゲットとするマウスモデルや、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)変異に対処するためのジストロフィンのエクソンスプライス部位をターゲットとするマウス体内の心筋や骨格筋などの筋肉組織において、10%~40%の編集効率が達成された。さらに、ヒト以外の霊長類(NHP)であるマカクザルの体内において、筋肉組織の中でも骨格筋では30%を超える編集レベルが得られた。

 NanoCasのコンパクトなサイズと強力なヌクレアーゼ編集の組み合わせは、逆転写酵素(RT)編集、塩基編集、エピジェネティック編集のような新しい編集様式の使用を含め、in vivoでの肝臓以外の組織の単一のAAVで実現可能な編集への扉を開く。

[出典] 
  • NEWS "A new ‘mini-CRISPR’ flexes its editing power in monkey muscles" Couzin-Frankel J. Science. 2025-01-31. https://doi.org/10.1126/science.zarx6ub
  • 投稿 "Single-AAV CRISPR editing of skeletal muscle in non-human primates with NanoCas, an ultracompact nuclease" Rauch BJ [..] Harrington LB. bioRxiv. 2025-01-30 (preprint). https://doi.org/10.1101/2025.01.29.635576 [所属] Mammoth Biosciences.
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