コリバクチンは、大腸菌などのある種の腸内細菌科(Enterobacteriaceae )によって産生される遺伝毒性を有するポリケチド(polyketide)であり、宿主のヒト大腸の細胞に特異的な突然変異シグネチャーを誘導し、大腸がんのリスク因子とされている。また、大腸がん患者の約7割にコリバクチン産生菌が認められている一方で、コリバクチン産生菌は多くの健常人にも存在する。したがって、ヒトのコリバクチン応答に関与する宿主経路を詳らかにすることが求められている。
フロリダを拠点とする研究者を主とする研究チームが今回、ポリケチド合成酵素 (PolyKetide synthases: pks)を帯びたコリバクチン産生菌と合成コリバクチン・アナログを利用して、ゲノムワイドなCRISPR/Cas9ノックアウト・スクリーニングとRNA-seqを行った。その結果、プロテアソーム・サブユニット(PSMG4 やPSMD4 など)、RNAプロセシング因子(SF1 やPRPF8 など)、RNAポリメラーゼIII(CRCPなど)など、MAGeCKスコアが2.0を超える20の濃縮遺伝子を同定し、コリバクチン感作におけるPSMD4 の役割を検証した。
HEK293T細胞およびHT-29細胞におけるPSMD4 のノックアウトは、細胞生存率を促進し、G2-M細胞周期停止を改善したが、合成コリバクチン742に暴露した後のリン酸化ヒストンH2AXのフォーカス (foci) の量には影響しなかった。これらの観察と一致して、PSMD4-/- 細胞は合成コリバクチン742暴露後、対照細胞よりも有意に高いコロニー形成率と大きなコロニーサイズを示した。
本研究は、PSMD4 がコリバクチン誘発DNA損傷後の細胞周期停止を制御していること、PSMD4 欠損細胞はDNA損傷にもかかわらず複製を継続し、悪性形質転換のリスクを高める可能性があること、ひいては、個々人の遺伝子発現の違いによって、DNA損傷後のコリバクチン誘導性腫瘍形成に対する感受性が異なることが示唆された。
[出典] "Genome-scale CRISPR/Cas9 screening reveals the role of PSMD4
in colibactin-mediated cell cycle arrest" Dougherty MW [..] Yang Y, Jobin C. mSphere. 2025-02-07. https://doi.org/10.1128/msphere.00692-24 [著者所属] U Florida College of Medicine (Dept Medicine, Dept Infectious Diseases and Immunology, Dept Anatomy and Cell Biology), U Florida (Dept Molecular Genetics and Microbiolog, Yale U (Dept Chemistry, Dept Pharmacology)
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