細胞表面におけるタンパク質間相互作用(PPI)は、その臨床的意義の高さから大きな関心を集めているが、これまで細胞表面PPIを検出する方法は主として顕微鏡に依存している。シンガポール国立大学の研究チームが今回標題のように、顕微鏡に依存することなく細胞表面の受容体クラスター形成現象を検出可能とするDNA回路を設計した。
この非顕微鏡的アプローチは近接原理に基づくもので、タンパク質をバーコードとして機能する一本鎖DNA(ssDNA)に結合させるアプローチで具現化された [グラフィカルアブストラクト参照] 。2種類のタンパク質にそれぞれ結合させた2種類の補助DNA鎖を介してCas12αの基質となる二本鎖DNA (dsDNA)を形成する。この dsDNAが、Cas12αのコラテラル活性のアクチベーターとして機能することで、Cas12αバイオセンサーが機能する。
このPPI検出用回路とCas12aとの適合性をまず実験的に検証し、確認されたリーク反応を最小化した。その上で、ヒト乳がん細胞株モデルで実証実験を試み、顕微鏡を使用することなく、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)のホモダイマーとHER1およびHER3とのヘテロダイマーの異なるレベルを半定量的に区別することに成功した。
本研究で実現した細胞表面レセプターのクラスタリングを検出するためのCas12a支援DNA回路は、診断アプリケーションや創薬における高速スクリーニングへの利用可能性を示した。
[出典] "CRISPR-Cas12a-Assisted DNA Circuit for Nonmicroscopic Detection of Cell Surface Receptor Clustering" Gao Y, Shan Ang Y, Lanry Yung LY. ACS Sens. 2025-02-09. https://doi.org/10.1021/acssensors.4c02770 [著者所属] National U Singapore (Dept Chemical & Biomolecular Engineering)
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