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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 CRISPR/Cas12aシステムは、そのユニークなトランス切断活性により、バイオセンシングにおける強力なツールとして登場した。中国の研究チームが今回、このシステムの調節能力、特にアクチベーター鎖の5′末端の修飾に焦点を当てて詳細な検討を行い、RESET(Random Extending Sequences Enhance Trans-cleavage activity)効果 [*]に基づいて設計されたヘアピン構造(HP)をアクチベーター鎖の5′末端に導入することで、CRISPR/Cas12aシステムのトランス切断活性を活性化するアクチベーター鎖の能力を効果的に抑制できることを見出した。
[*] 2022-06-05 "RESET"効果:標的一本鎖DNAの3’末端の伸長を介してCas12aのトランス切断活性を向上; 2024-0-6-22 アクチベーター鎖のコンフォメーション変化を介してCas12aコラテラル活性を直接制御 - 複数の生体分子のライブセルイメージングを実現 

 この抑制は、HPとアクチベーター鎖との関係や、使用されるリンカーの種類(DNA、RNA、ペプチド)に依存しない。HPをアクチベーター鎖から切り離すと、システムの活性が回復する。

 この発見に基づき研究チームは、HPとアクチベーター鎖をカスパーゼ-3 (Casp-3)認識部位を含むペプチドリンカーで連結することにより、アポトーシスの必須因子であるCasp-3に対する高感度バイオセンサーを構築した。

 このバイオセンサーは、Casp-3の検出においてその感度と特異性が検証され、また、生きた細胞におけるCasp-3のイメージングを介した薬剤誘発アポトーシスのモニターも可能にすることから、アポトーシス過程の研究、薬剤のスクリーニング、薬剤の有効性の評価、治療成績の評価に有用なツールとなる。

 このバイオセンサーの戦略はまた、他のペプチドベースのターゲットの検出にも有望であり、早期の疾患バイオマーカー検出とタイムリーな治療介入の視野を広げる。

[出典] "Activator Strand Modifications in CRISPR/Cas12a: Unlocking the Potential for Casp-3-Targeted Biosensing and Imaging Analysis of Apoptosis" Li QN [..] Cai QL, Kong DM. Anal Chem. 2025-02-12. https://doi.org/10.1021/acs.analchem.4c06591 [著者所属] Nankai U (State Key Laboratory of Medicinal Chemical Biology, College of Life Sciences), Tianjin Institute of Urology;グラフィカルアブストラクト参照
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