crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 抗CRISPRタンパク質(Acr)は細菌やアーケアのCRISPR-Cas免疫防御を阻害するが、既知のAcrのほとんどはCasヌクレアーゼとcrRNAのRNP複合体に作用する。ドイツの研究チームは今回、Riemerella anatipestifer 由来のAcrVIB1が、Cas13bをcrRNAのシンクへと変換し、CRISPR免疫を効果的に抑制するユニークな抗CRISPR戦略をとることを発見した。

 AcrVIB1AcrVIB1はCas13bには強固に結合するが、Cas13b-crRNA複合体には結合しないため、crRNAの結合は阻害されるのではなく、むしろ増強される [グラフィカルアブストラクト引用右図の一段目参照]。しかし、Cas13bにより強固に結合したcrRNAはプロセシングを受けず、標的RNAがあってもコラテラルRNA切断を活性化することができない。また、結合したcrRNAはRNアーゼにもアクセス可能であり、Cas13bの存在下でもin vivoでcrRNAのターンオーバーが起こる。

 最後に、クライオ電顕構造から、AcrVIB1はcrRNAの固定を担うCas13bのらせん状ドメインと結合し、そのドメインは固定されていないことが明らかになった。

[出典] "AcrVIB1 inhibits CRISPR-Cas13b immunity by promoting unproductive crRNA binding accessible to RNase attack" Wandera KG [..] Blankenfeldt W, Beisel CL. Mol Cell 2025-02-17. https://doi.org/10.1016/j.molcel.2025.01.020 [著者所属] Helmholtz Institute for RNA-based Infection Research, Helmholtz Centre for Infection Research, Technische U Braunschweig (Institute of Biochemistry, Biotechnology and Bioinformatics), U Würzburg (Medical Faculty)
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット