英国の研究チームが、公開されているゲノムワイドなシングルターゲティング(遺伝子あたり1 sgRNA)のsgRNAライブラリーの比較評価と、プール型CRISPR機能喪失スクリーニングの戦略としてのデュアルターゲティング(遺伝子あたり2 sgRNAs)の評価を含むベンチマークを行った。その上でこのデータを活用し、他のライブラリよりも50%小さく、特異性と感度を維持し、より広範なスケールでの展開が可能な、2つの最小限のゲノムワイドなヒトCRISPR-Cas9ライブラリを設計した。
致死性と薬物-遺伝子相互作用の両方において、より小さなライブラリーのCRISPRスクリーンの性能が、オリジナルの大きなライブラリーと同等かそれ以上であることが示された。したがって、より小さなライブラリーによって、試薬やシーケンスのコストを削減し、スループットを向上させ、オルガノイドやin vivoモデルを含むような限られた材料でのアプリケーションの実現可能性を向上させることで、より費用対効果の高いスクリーニングが可能になった。
さらに、デュアルターゲッティング・ライブラリーを用いることで、必須性スクリーニングと薬物-遺伝子相互作用スクリーニングの両方でパフォーマンスが向上することが確認された。
しかしながら、非必須遺伝子であっても、同じ遺伝子を二重にノックアウトすると、DNA損傷応答が亢進するためか、フィットネスがわずかに低下することが観察された。この観察結果は、DNA損傷応答の役割を確認するためにさらなる調査が必要である。
しかしながら、非必須遺伝子であっても、同じ遺伝子を二重にノックアウトすると、DNA損傷応答が亢進するためか、フィットネスがわずかに低下することが観察された。この観察結果は、DNA損傷応答の役割を確認するためにさらなる調査が必要である。
[評価対象とした必須遺伝子とgRNAsおよび細胞株]
- 必須遺伝子:先行研究 [Cell Rep, 2016]で定義された101の初期(early)必須遺伝子、69の中期(intemediate)必須遺伝子、77の後期(late)必須遺伝子および493の非必須遺伝子を標的した。
- gRNAs:Brunello、Croatan、Gattinara、Gecko V2、Toronto v3、Yusa v3の6つの既存ライブラリから、選択した必須遺伝子および非必須遺伝子を標的とする全てのgRNAs;各ライブラリーを配列で比較したところ、共通するgRNAは少なく、各ライブラリーに固有なプライベートgRNAの割合が高かった。
- 細胞株:HCT116, HT-29, RKO, およびSW480の大腸癌細胞株 [論文Fig. 1参照]。
[出典] "A benchmark comparison of CRISPRn guide-RNA design algorithms and generation of small single and dual-targeting libraries to boost screening efficiency" Lukasiak S, Kalinka A [..] Ross-Thriepland D, Walter D. BMC Genomics 2025-02-26. https://doi.org/10.1186/s12864-025-11386-3 [著者所属] Joint Astrazeneca-Cancer Research Horizons Functional Genomics Centre, AstraZeneca, Cancer Research Horizons, Cancer Research UK.
コメント