crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 効果的なゲノム編集には、免疫反応、オフターゲット編集、細胞毒性を最小限に抑えつつ、標的細胞に十分な量のCRISPR-Cas9リボヌクレオタンパク質(RNP)が送達されることが必要である。現在、Cas9 RNPの臨床利用には、生体外での細胞へのエレクトロポレーションが用いられているが、この方法とパッケージ化されたRNPデリバリーとの体系的比較は行われていない。

 Doudna研究チームが今回、ゲノム編集に必要なCas9の投与量を調べるために、エレクトロポレーションとPackaged delivery of CRISPR–Cas9 GAエンベロープド・デリバリー・ビークル(Enveloped Delivery Vehicle: EDV)[crisp_bio 2024-07-29]という2つの送達戦略を比較した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。

 まず、蛍光相関分光により、ヒト細胞株の編集には核あたり1300個以上のCas9 RNPが必要であることを同定した [論文Figure 1 
参照]。同等のCas9 RNP用量において、EDVは、複数のヒト細胞型および標的ゲノム配列にわたって、30〜50倍編集効率が高い。また、EDV送達の場合の編集速度は、エレクトロポーレションの少なくとも2倍である。Packaged delivery of CRISPR–Cas9 4編集の有効性と速度において観察されたこうした差は、RNPとEDVの細胞核への輸送の差(閣内滞留時間)に一部起因することを示唆するデータが得られた [Figure 4引用右図参照]

 本研究は、エレクトロポレーションからEDVのようなパッケージ化された送達戦略に切り替えることによって、現在のex vivo 研究や臨床ゲノム編集に使用されているCas9 RNPの投与量を大幅に削減できる可能性を示唆している。これらの知見はまた、ゲノム編集の有効性に対する送達様式の重要性を明らかにし、最小限の副作用で最大限のゲノム編集を確実にするための最適な送達方法を設計する道を開くものである。

[出典] "Packaged delivery of CRISPR–Cas9 ribonucleoproteins accelerates genome editing" Karp H [..] Doudna JA. Nucleic Acids Res. 2025-02-27. https://doi.org/10.1093/nar/gkaf105 [著者所属] UC Berkeley (Dept Chemistry, Innovative Genomics Institute, Dept Molecular and Cell Biology, California Institute for Quantitative Biosciences), Gladstone Institute of Data Science and Biotechnology, ARC Institute, Chan Zuckerberg Biohub, HHMI.
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