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ケナガマンモス[注] ディエクスティンクション (de-extinction):ケナガマンモス Mammuthus primigenius) [右図参照] のような絶滅した生物種の復活
 George ChurchBan Lammが共同で設立したディエクスティンクション(de-extinction)スタートアップ企業Colossal Biosciencesを主とする研究チームが、CRISPR-Cas9ヌクレアーゼシトシン塩基エディター(CBE)による多重遺伝子編集を経て、毛の長いウリー (woolly)・マウスを誕生させたことを、プレプリントサーバーのbioRxivに投稿した。ジョージ・チャーチも共著者に名を連ねている [下図はColossal BiosciencesのX投稿から引用]。

 ケナガマンモスは、厚い毛皮とその他の寒冷適応形質を持っていたため、北極圏の過酷な環境でも生き延びることができた。Colossal Biosciencesは、ケナガマンモスの蘇えさせることを目指して、ウリー・マンモスの遺体から抽出したゲノムと、アジアゾウのようなマンモスの近縁種のゲノムを比較し、マンモスの系統で進化したタンパク質を変化させる遺伝的変異を探っている。今回は、主としてマウスにおける被毛表現型の過去の観察に基づいて選択した毛の形態と脂質代謝に関連する7種類の遺伝子を標的とする多重編集を介して、ウリー・マウスを作出した。

 ケナガマンモスとアジアゾウのゲノム比較から、対象とした遺伝子の中で、Tgfa 遺伝子にはマウス遺伝子と同様な機能喪失変異があることがわかった。Tgfa の機能喪失型は、アジアゾウとの分岐後にマンモスの系統で生じたものである。

 本研究は、ウリー・マウスというケナガマンモスを中心とした遺伝的変異を試験するための迅速なプラットフォームを確立し、同時に、複雑な遺伝子モデルの作製法を前進させ、絶滅を防ぐ努力や、哺乳類の毛の発達と寒冷適応の遺伝的機構を明らかにするための研究基盤を提供するに至った。

[研究の対象とされた一連の遺伝子]
  • うねった毛皮と巻き毛をもたらす遺伝子Tgm3
  • 毛包の向きを制御するWntレセプター遺伝子 Fzd6 
  • エクソン5の欠失とFzd6の欠損が背側横毛パターンを生み出すAstn2
  • 被毛の質感に影響し、変化した粗い被毛の質感として現れるいわゆる「ウーリー」変異の根底にある Fam83g
  • 成長期(anagen)・退行期(catagen)の遷移を制御することで毛髪の長さを調節し、より長い番毛の成長をもたらす線維芽細胞成長因子5遺伝子 Fgf5
  • 毛髪の発達を制御する上で重要な役割を果たす形質転換成長因子でありその機能喪失によってうねった毛髪の質感が生じるTgfa
  • その変異が毛髪構造を変化させるケラチン遺伝子のKrt25や Krt27
  • フェオメラニンとユーメラニンの産生を制御し、結果として毛色を変化させるメラノコルチン-1受容体遺伝子 Mc1r
  • 脂肪酸輸送に関与しマンモスの早期停止コドンを持つ脂肪酸輸送遺伝子 Fabp2(マウスでは性差に依存した代謝異常と脂肪率の差をもたらし、寒冷適応における役割を示唆している)
[crisp_bio注] Colossal BiosciencesのX投稿の画像の一部に"TINY STEPS ON THE PATH TO MAKING A MAMMOTH"と記されている。このステップが、ケナガマンモスの遺伝子をアフリカゾウの胚に挿入し,胚移植から出産を経て、ウーリー・マウスを復元する長い物語の第1章の第一段落になっていくことを期待したい。

[出典] "Multiplex-edited mice recapitulate woolly mammoth hair phenotypes" Chen R [..] Shapiro B, Abrahams ME. bioRxiv 2025-03-04 [preprint]. https://doi.org/10.1101/2025.03.03.641227  [著者所属] Colossal Biosciences, Form Bio, UT Southwestern Medical Cente, Swedish Museum of Natural History, Centre for Palaeogenetics, Stockholm U, Harvard Medical School.
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