crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 2025-10-03 7.26.572025-10-16 Spring Natureのメール配信ニュース"Nature Briefing"によると「政府機関の一部閉鎖が科学界に打撃を与え始めている」。政府機関職員のレイオフ(CDCでは先週金曜日 (10日) ~1,300人がレイオフされ (ただし、700人のレイオフは直ちに取り消された))、NSFの助成金関連業務も停止し、スミソニアン博物館も閉鎖されている。ニュースでは「列車事故でかろうじて生き延びた直後に車に轢かれたような気分だ」という匿名の科学者のコメントが引用されている。なお、crisp_bioがPubMedを"CRISPR"で検索してみたところ、リストの最新論文の発行日は2025年10月15日付であった。
[関連記事] "Scientists lose jons and grants as US government shutdown takes a toll" Ahart J, Garisto D, Koslov M, Ledford H, Tollefson J, Watson T, Witze A. Nature 2025-10-25. 

2025-10-03
PubMed一時停止:政府の「つなぎ予算案」が上院で否決された*ことから米国の政府機関の一部閉鎖が始まり、そのあおりでPubMedのサービスも停止している [PubMedのスクリーンキャプチャーを右図に引用]。
[*] 共和党は上下院とも過半数を握っているが、つなぎ予算可決のためには上院の5分の3 (60票) の賛成が必要であり、上院民主党議員8名以上の支持が不可欠。
2025-03-09 初稿
 PubMedは、米国NIH傘下のNLM(National Library of Medicine: 国立図書館)の中に位置付けらているNCBI (National Center for Biotechnology Information)が構築し、無料で世界中に公開している生物医学文献データベースである。日本時間で3月2日にPubMedが一時停止し、各国・各地域の研究者がパニックに陥った ("...many researchers globally into a panic")PubMed [右図はcrisp_bioのX投稿]。翌日の3日には復旧したが、NCBIのWebサイトには未だ、PubMedの一時停止に関するコメントは掲載されていない。

 オーストラリアのビクトリア州でエビデンスに基づく医療を研究している独立科学者、Hilda Bastian氏は、もしNCBIのサービスを維持するために必要な専門知識と組織的知識を持つNCBI職員が、米国連邦政府機関への広範な人員削減の一環として職を失えば、PubMedの機能停止はより一般的になるだろうと、危惧している。Bastian氏は2011年から2018年の間、NCBIで働いていた。

 しかし、ソフトウェア開発者であり、ソフトウェア会社Power DNSの共同設立者である Bert Hubert氏は、PubMedをアクセスし続けられる地域があったことから、このサイトが意図的に閉鎖されたのではないと結論づけた。しかし、Hubert氏は「問題の原因はまだ明らかになっていない。なぜこのようなことが起こったのか、なぜ復旧に2日間もかかったのか、極めて重要な情報資源であるだけに、経緯を詳詳らかにすることが必要だ」とした。

 PubMedに変わる情報資源はあるのか?

 PubMedに万が一のことがあった場合の代替候補としてまず、英国のヒンクストンにある公的研究機関であるEMBL-EBI(European Molecular Biology Laboratory - European Bioinformatics Institute)が運営するEurope PMCがあげられる。ただし、Europe PMCも部分的にNCBIのPubMedに加えたPMC (PubMed Central) に依存していると思われる。

 民間からは、学術文献の全文検索を無料で提供しているGoogle Scholarや、有料でアクセス可能なクラリベイトWeb of Scienceエルゼビアが所有するスコープスなどのデータベース、また、2022年から提供され始めたオープンアクセスのデータベースOpenAlexが、運営されている。

 しかし、現時点で、いつでも、どこでも、誰もが、フリーでアクセスできる網羅的な生物医学文献データベースであるPubMedを肩代わりできるデータベースは、見当たらないように思われる。

 OpenAlexは、その一部を英国のファミリー慈善財団Arcadiaに支援されているNPOのOurResearchがAIを活用しながら構築・提供している。2024年には、フランスの研究・高等教育省は、OpenAlexのプロジェクトを「極めて重要なオープンサイエンスのインフラ」とみなし、財政的に貢献することを約束した。日本もOpenAlexへの財政的貢献を考えても良いのではなかろうか。

[出典] NEWS "‘Omg, did PubMed go dark?’ Blackout stokes fears about database’s future" Mallapaty S. Nature 2025-03-04. https://doi.org/10.1038/d41586-025-00674-3
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット