枯草菌(Bacillus subtilis )は、リグノセルロース系バイオマスの分解に重要な産業微生物である。しかし、自然環境由来の野生型株は、セルラーゼ遺伝子の構成に本質的な欠陥が有る。中国の研究チームが今回、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を介した組換えによりその課題解決を試みた。
シロアリ(Reticulitermes labralis )の腸から分離された枯草菌RLI2019の染色体のaprE 遺伝子座、epr 遺伝子座、amyE 遺伝子座に、それぞれ、eglS、cel48S、bglS をCRISPR/Cas9を介したゲノム編集により組み込み、枯草菌AEA3株を作製した。
枯草菌AEA3株のエンドグルカナーゼ活性は3.1倍、エキソグルカナーゼ活性は6.6倍、β-グルコシダーゼ活性は3.0倍、キシラナーゼ活性は1.2倍、総セルラーゼ活性は1.8倍にそれぞれ向上し、26.31 U/mL、9.77 U/mL、3.91 U/mL、19.63 U/mL、2.42 U/mLに達した。注目すべきことに、枯草菌AEA3株では、作物藁の糖化効率が向上し、繊維構造が効果的に破壊され [グラフィカルアブストラクト参照]、中性および酸性デタージェント繊維、リグノセルロース、ヘミセルロースの含量が有意に減少した。
本研究において、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術によって枯草菌のセルロース分解能力を向上させることに成功し、枯草菌のリグノセルロース・バイオマス変換への応用の可能性を広げた。
[出典] "Enhanced lignocellulose degradation in Bacillus subtilis RLI2019 through CRISPR/Cas9-mediated chromosomal integration of ternary cellulase genes" Liu G, Gong H [..] Yang Y. Int J Biol Macromol. 2025-03-04. https://doi.org/10.1016/j.ijbiomac.2025.141727 [著者所属] Northwest A&F U (陝西省), Microbial Research Institute of Liaoning Province (遼寧省)
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