卵巣癌のような固形癌に対するCAR-T細胞は、腫瘍の不均一性や腫瘍微小環境(TME)における免疫抑制による課題に直面しており、CAR-T細胞療法の有効性をさらに高める新たなアプローチが求められている。T細胞療法において、チェックポイント分子を阻害することは、疲弊を克服し抗腫瘍活性を高めるために極めて重要である。さらに、正常な健康な細胞には存在しないマーカーを標的とするように細胞を工学的に設計することにより、安全性を優先させることで、オフターゲットのリスクを減らすことができる。
オーストラリアのCartherics Pty Ltdを主とする研究チームは今回、卵巣がんなどの腺がんに高発現する腫瘍関連糖タンパク質(TAG)-72(Tumor-associated glycoprotein 72, TAG-72)を標的とするCAR-T細胞において、CRISPR/Cas9を用いてT細胞阻害酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)αおよびζをノックアウト(KO)した。
このDGKα/ζ KOはCAR-T細胞の生存率や表現型に影響せずに、in vitro ではTAG-72を発現するがん細胞を選択的に殺傷し、in vivo では樹立した腫瘍を最長100日間除去した。一方で、DGKα/ζをKOしなかった対照TAG-72 CAR-T細胞を処方した場合は、40日前後で腫瘍が再発した。
こうして、固形癌において、CAR-T細胞療法に対する応答を強化し、免疫抑制を克服し、長期的な腫瘍制御を改善する可能性が示された。
こうして、固形癌において、CAR-T細胞療法に対する応答を強化し、免疫抑制を克服し、長期的な腫瘍制御を改善する可能性が示された。
[出典] "CRISPR/Cas9 knockout of DGKα/ζ improves the anti-tumor activities of TAG-72 CAR-T cells in ovarian cancer" Evtimov VJ, Nguyen NYN, Hammett MV [..] Shu R. Mol Ther Oncol 2025-03-04. https://doi.org/10.1016/j.omton.2025.200962 [著者所属] Cartherics Pty Ltd (Australia), Monash U, ToolGen Inc (韓国);グラフィカルアブストラクト参照
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