crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 ビフィズス菌属の腸内細菌叢は、プロバイオティクスや治療薬として、ますます研究が進められている。しかし、ビフィズス菌には遺伝学的ツールが乏しく、また制限修飾(RM)系が広く存在するため、これらの細菌を遺伝学的に操作する能力は限られている。台湾の研究チームは今回、ビフィズス菌のゲノム編集を可能とするCas9ニッカーゼ(spCas9n (D10A))をベースとし、プロモーターの組み合わせを変えた一連のシトシン塩基エディターシステム(cytosine Base Editor SysTem: cBEST)を構築・評価した。
  • 異なるプロモーターを保有するこれらのcBESTプラスミドは、異なる菌株やゲノムコンテクストにおいて様々な編集効率を示し、spCas9nやsgRNAの発現を微調整することの重要性が明らかになった。
  • 内在性RMシステムを破壊またはバイパスすることで [*]、形質転換とゲノム編集の効率が劇的に改善することを示した。[*] B. longum NCIMB 8809の3つのREase遺伝子(HsdR, EcoRII_0606, EcoRII_0983)をcBESTプラスミドを用いて個別に、あるいは組み合わせてノックアウトした。
  • RMを破壊したビフィドバクテリウム・ロンガムを宿主株として用い、in vitroで組み立てた編集コンストラクトの増幅とメチル化を同時に行うことで、クローニング宿主としての大腸菌を回避し、高い編集効率(60%~100%)を維持しながらクローニングプロセスを合理化できることを示した。
  • さらに、同一のcBESTを用いて複数のビフィズス菌種間で保存されている代謝遺伝子破壊することに成功し、cBESTの移植性も示された。
 今後、ビフィズス菌のゲノムを効率的に編集・操作できるようになれば、ヒトの健康増進に向けた研究や応用に新たな可能性が生まれるだろう。

[出典] "Highly efficient CRISPR-Cas9 base editing in Bifidobacterium with bypass of restriction modification systems" Lin HC, Hsiao WC [..] Hsu CC, Zhang MM. Appl Environ Microbiol. 20205-03-10. https://doi.org/10.1128/aem.01985-24 [著者所属] Dept Chemistry, National Taiwan U; Institute of Biotechnology, National Tsing Hua U; Institute of Molecular and Genomic Medicine, National Health Research Institutes; Leeuwenhoek Laboratories Co Ltd.
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット