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 Cas9dは、Cas9ファミリーの中で最も小さなメンバーであり、そのコンパクトなドメイン構造を介して標的を効果的に切断する。しかしながら、その基礎となるメカニズムは依然として不明である。中国の研究チームが今回、ターゲットフリーおよびターゲット結合状態におけるCas9d-sgRNA複合体の構造をクライオ電顕法で再構成 [*]し、生化学的アッセイも加えて、Cas9dのPAM認識とDNA切断メカニズムを解明した。
[*]
  • EMD-60379/PDB 8ZQ9 : Cryo-EM structure of the Cas9d-sgRNA complex (2.87 Å)
  • EMD-60006/PDB 8ZDR: Cryo-EM structure of the Cas9d-sgRNA-target DNA complex (2.65 Å)
 ヌクレアーゼ活性には少なくとも17塩基対のガイドとターゲットとのRNA-DNAヘテロ二重鎖が必要であることが明らかになった。また、sgRNAは、Cas9ヌクレアーゼとターゲットとの間のアダプターとしての典型的な役割にとどまらず、Cas9dの構造的サポートと機能的制御も行っていることも明らかになった。

 ターゲット結合時には、Cas9dのRECドメインsgRNAのスキャフォールドのセグメントで構成されるモジュールが、ヘテロ二重鎖形成とヌクレアーゼ活性を可能にするコンフォメーション変化を起こし、このハイブリッド機能モジュールがヘテロ二重鎖の相補性を正確にモニターし、その結果、Cas9dに、SpyCas9よりも低いミスマッチ耐性がもたらされる。研究チームはこのモジュールを、 “REM” (RNA-coordinated target Engagement Module) と命名した [論文Fig. 3参照]。

 こうした構造と機能の情報をベースに研究チームはさらに、コンパクトなCas9d自体を、さらに切り詰めることができることも示した。RECドメインの蓋のような領域(アミノ酸座標100 -129 の領域)[論文Fig 4 d参照]は、中央チャネルがターゲットにアクセスするのを妨げる。この領域を除去することで、ミスマッチの識別を損なうことなく、Cas9dによるターゲットの切断が加速された。さらに、大腸菌のin vivoアッセイを用いたCas9dの最近の研究で実証されたように、sgRNAはそのスキャフォールド領域で最大20%切断することができる。Cas9dタンパク質とsgRNAの両方における切断の組み合わせることで、Cas9dのヌクレアーゼ活性を維持しつつCas9d-sgRNAの小型化が実現された。さらに、PAM配列は(-2)と(-3)の位置でアデニンに対してわずかな耐性を示した。PAMと相互作用する残基(K715A)を変異させても標的の切断は維持され、PAM緩和変異体の開発の可能性を示した。加えて、興味深いことに、SpCas9のREC2ドメインをCas9dのRECドメインに挿入することでCas9dの切断効率が向上し、Cas9オーソログ間の認識モジュールの適応性が示唆された [論文Fig. 6参照]。

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[出典] "Insights into the compact CRISPR–Cas9d system" Yang J, Wang T, Huang Y, Long Z [..] Liu Z, Zhang H. Nat Commun. 2025-03-12. https://doi.org/10.1038/s41467-025-57455-9 [著者所属] Tianjin Medical University (State Key Laboratory of Experimental Hematology, Dept Biochemistry and Molecular Biology, Tianjin Key Laboratory on Technologies Enabling Development of Clinical Therapeutics and Diagnostics, Dept Bioinformatics, School of Basic Medical Sciences, Bioinformatics, School of Basic Medical Sciences, Dept Pharmacology), Southern U Science and Technology (Shenzhen Key Laboratory of Biomolecular Assembling and Regulation, Institute for Biological Electron Microscopy, Dept Immunology and Microbiology)
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