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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

 精密遺伝医薬品の開発を進めているMetagenomi Incの研究チームが今回、ヒト細胞において、CAST (CRISPR関連Casトランスポザーゼ)を介して大規模なDNAセグメントを宿主ゲノムに組み込み可能なことを示した。

 CRISPR関連(Cas)トランスポザーゼ(CAST)は、二本鎖切断を起こすことなく、DNAの大きなセグメントをプログラム可能に統合できるRNAガイドシステムである。CASTの中で、V-K型CAST [*]は単一のCas12kエフェクターでターゲッティング可能な比較的単純なシステムである。

 研究チームは今回、広範なメタゲノムデータセットから多様なV-K型CASTシステムを同定し、in vitroおよび細胞内でその活性を確認した。さらに、偏りのないアッセイ法を開発することでシステムの特異性に対処し、ヒト細胞におけるCASTのオフターゲット効果を評価した。注目すべきことに、オフターゲット効果は特定のゲノム領域で再現性よく見つかるまれな事象であった。

 さらに、核への局在と機能を工学的に制御することで、セーフハーバー遺伝子座に治療関連遺伝子(第IX因子)を完全に組み込むなど、複数の細胞型で活性を示すシステムが得られた。

 V-K型CASTシステムによるこれらの進歩は、ヒト細胞において部位特異的かつプログラム可能な遺伝子サイズの統合を達成するために、CRISPR-Cas9や複雑なI-F型(Cascade)CASTアプローチよりもこの編集システムが有望であることを示している。

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[出典] "Integration of therapeutic cargo into the human genome with programmable type V-K CAST" Liu J, Goltsman DSA [..] Brown CT, Thomas BC. Nat Commun. 2025-03-13. https://doi.org/10.1038/s41467-025-57416-2 [著者所属] Metagenomi Inc.
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