Human BioMolecular Atlas Program (HuBMAP)は、健康な成人の身体の3D Human Reference Atlas (HRA)を構築することを目的としている。20以上のコンソーシアムの専門家が協力し、共通座標フレームワーク(Common Coordinate Framework: CCF)、ナレッジ・グラフ(knowledge graph)、人体のマルチスケール構造(臓器や組織から細胞、遺伝子、バイオマーカーまで)を記述するツールを開発し、HRAを使用して加齢や疾患、その他の摂動によって生じる変化を特徴付ける。
HRA v.2.0は、33のASCT+Bテーブル [*]とオントロジーにリンクされた65の3Dリファレンスオブジェクトから、4,499のユニークな解剖学的構造、1,195の細胞タイプ、2,089のバイオマーカー(遺伝子、タンパク質、脂質など)をカバーしている。
[*] 主要な解剖学的構造、細胞タイプ、バイオマーカー(Anatomical Structures, Cell Types, and Biomarkers)の名称と相互リンクの表 [Cell, 2021]
新しい実験データは、(1) 細胞タイプのアノテーションツール(例えばAzimuth [Cell, 2021])、(2)検証済みの抗体パネル、または (3) 組織データを空間的に登録することにより、HRAにマッピングすることができる。
本論文では、HRAのユーザーストーリー、用語、データフォーマット、オントロジー検証、統一された解析ワークフロー、ユーザーインターフェース、説明資料、アプリケーションプログラミングインターフェース、柔軟なハイブリッドクラウドインフラ、およびアトラス使用アプリケーションのプレビューについて説明する。
2018年に発足したHuman BioMolecular Atlas Program(HuBMAP)は、臓器や組織から細胞や標準的なバイオマーカーまで、あらゆるレベルにわたって健康な(「非疾患」の)人体の包括的な参照モデルを構築・共有することを目的としている。
- HuBMAP Portal (https://hubmapconsortium.org)では、目標や実験データ、アトラスデータ、ツール、トレーニング資料へのリンクを紹介している。
- Data Portal (https://portal.hubmapconsortium.org)は実験データセットを提供し、データ処理、検索、フィルタリング、可視化をサポートする。
- Human Reference Atlas Portal (https://humanatlas.io)は、アトラスデータ、コード、手順書、教材へのオープンアクセスを提供する。
Human Reference Atlas (HRA) には 各臓器に固有のフレームワークではない人体全体にわたって一貫したCommon Coordinate Framework (CCF) [**] が含まれ、3 次元(3D)臓器モデル、組織学的画像、単一細胞のプロファイリングによるオミックスデータなど、マルチモーダルデータの調和を助ける。HRAデータは、ヒト実験者が作成した情報(例えば、ASCT+Bテーブル)、2次元および3次元参照オブジェクト)、HRAにマッピングされた実験データ、およびさまざまなアトラス・アプリケーションをサポートする拡充されたアトラス・データから構成される。
CCFは、組織学的画像、血管経路、単一細胞解析など、新しい実験データをアトラスに組み入れていくための定量的ワークフローを提供する。結果として得られるHRAは、人体の特定の3D位置における細胞や解剖学的構造の共通の状態を示すデータエビデンスを提供し、これは生物学的変数(例えば、年齢、性別、人種、体格)や急性または慢性疾患にわたって起こる変化を記述するための標準的な参照として使用することができる。病気の状態における細胞の種類や状態の変化をよりよく理解することで、医薬品開発などのアプリケーションに役立てることができ、病気の組織とそうでない組織、そしてCCFをマッチさせたリファレンスを比較することで、精密医療に関連するターゲットを明らかにすることができる。
[**]
CCFの開発を進めるため、2020年3月、米国国立衛生研究所(NIH)とヒト細胞アトラス(HCA)[eLife, 2017]コンソーシアムは、CCFの分科会を含む合同バーチャル会議を開催した。その結果、HRAワーキンググループ(WG)が結成され、この55ヶ月の間に、WGメンバーはHRAの定義と主要な特性を共同で開発した。
[図表一覧]
- Table 1 User stories. Feature summary, target user roles, user activities and added value for seven user stories that drive HRA development
- Fig. 1: Human Reference Atlas components and linkages.
- Table 2 Ontologies used and extended
- Fig. 2: Mapping experimental data to the HRA.
- Fig. 3:Human Reference Atlas usage.
[関連crisp_bio記事]
- 2024-03-10 Nature 誌2024年注目の7技術の一つ (3) - 細胞アトラス
- 2022-03-04 血液プロテオフォームアトラス:ヒト造血細胞におけるプロテオフォームの参照マップ
- 2023-12-28 ヒト細胞アトラスにおけるデータセット間の細胞タイプの自動ハーモナイゼーションと統合
- 2019-10-21 [展望] NIHヒト生体分子アトラス・プログラム、一細胞分解能のヒトボディー3Dマップを目指す
[出典] "Human BioMolecular Atlas Program (HuBMAP): 3D Human Reference Atlas construction and usage" Börner K [..] HRA (Human Reference Atlas) Team, Buckle A, Herr II BW. (bioRxiv 2024-08-14) Nat Methods 2025-03-13. https://doi.org/10.1038/s41592-024-02563-5 [著者所属] Indiana U (Dept Intelligent Systems Engineering), CIFAR MacMillan Multiscale Human program, Carnegie Mellon U (Pittsburgh Supercomputing Center, Ray and Stephanie Lane Computational Biology Department), U Pittsburgh School of Medicine, New York Genome Center, U Cambridge (Cambridge Stem Cell Institute, Dept Medicine), U Rochester Medical Center, Johns Hopkins U (Dept Biomedical Engineering), Duke U (Dept Biomedical Engineering), J. Craig Venter Institute, Harvard Medical School (Dept Biomedical Informatics)



コメント