暦年齢(chronological age)と推定脳年齢の差で定義される脳年齢ギャップ(Brain Age Gαp: BAG)は、脳の健康の有望なマーカーである。しかし、脳の老化の遺伝子構造と信頼できる治療標的は、まだ十分に理解されていない。
中国の杭州と北京の研究者にイスラエルの情報系の研究者が加わった研究チームが今回、UKバイオバンクに蓄積されていた38,961人のデータで学習させ、3つの外部データセット [*] で検証された深層学習モデルを使用して、磁気共鳴画像(MRI)のデータから脳年齢を推定することから始めて、既存薬から13種類の潜在的な薬剤を再発見するに至った。
[*] ADNI (https://adni.loni.usc.edu/) ; PPMI (https://ppmi-info.org/) ; IXI dataset (https://brain-development.org/ixi-dataset/)
研究チームは、MRIデータに、31,520人の遺伝子データを利用したゲノムワイド関連解析(GWAS)データを重ねることで、脳の老化(BAGギャップの拡大)に関連する遺伝子を同定した。さらに、創薬の標的になり得る遺伝子を同定することを目的として、BAG 関連遺伝子と血液細胞内の 2,682 個の遺伝子と脳組織内の 2,915 個の遺伝子の活動データとを統合解析した。その結果、BAG関連遺伝子の中から、64 個の候補遺伝子が同定された。さらに、メンデルランダム化 (Mendelian randomizaiton: MR) と 発現量的形質遺伝子座(eQTL)および タンパク質-定量的形質遺伝子座(pQTL)データの共局在解析から、MAPT、TNFSF12、GZMB、SIRPB1、GNLY、NMB、C1RL など、脳老化の治療薬の標的になり得る遺伝子7種類が特定された。
続いて、64個の遺伝子のうち29個を標的とし、脳の老化を逆転させるのに役立つ可能性がある、医薬品として承認されているか、臨床試験でテストされている466個の化合物を特定した。これらの化合物のうち13種類は、64個の遺伝子またはそのタンパク質産物の一部に作用し、すでに抗老化臨床試験でテストされているか、テスト中であった。これらには、卵巣の老化を遅らせるための臨床試験が行われているラパマイシンが含まれていたが、脳の老化を遅らせる可能性のある候補としてはまだ研究されていない化合物も含まれていた。
本研究は、脳老化の遺伝的基礎に関する洞察を提供し、脳老化を治療して健康寿命を延ばすための薬剤開発への手がかりを示した。
[図一覧]
[出典]
- 論文 "Genetically supported targets and drug repurposing for brain aging: A systematic study in the UK Biobank" Yi F [..] Jia Z, Wu F, Huang Z. Sci Adv 2025-03-12/03-14. https://doi.org/10.1126/sciadv.adr3757 [著者所属] Zhejiang U (College of Computer Science and Technology), Peking Union Medical College CAMS (Dept Neurology, Peking Union Medical College Hospital), U Haifa (Dept Information Systems), Medical Innovation Research Division of Chinese PLA General Hospital
- NEWS "How fast your brain ages is affected by these 64 genes" Naddaf M. Nature 2025-03-12. https://doi.org/10.1038/d41586-025-00766-0
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